ころび方から教えます 「教育は愛」No.114

低学年

体育授業ー7 (低学年)低学年・ころび方から教えます

◆子どもたちの体力は昭和六十年頃をピークに下降線を辿っています。平成、令和と時代は移り、現在では下げ止まりの感もあります。

 私が担任をしていた平成の頃、子どもたちは、転ぶ時に手のひらを着くことができなくなっていることに気付きました。「そんなバカなことが!」と思われるかも知れませんが事実です。

 転んだ瞬間に手の甲を着いたり、指を折り曲げたまま着いたりするのです。この事実が解ったのは、マット運動の授業でした。

 前転をする時に、手のひらを開いて着けないのです。なぜでしょうか?

 歩行器にすぐに入れて這い這いの経験が少なかったから、マットや地面に手を着くと汚いから、諸説あります。私は、這い這いの経験が少ないからだと思っています。今や0歳児保育の時代です。保育園では、十分に這い這いをさせて、将来必要となる運動感覚を身に付けさせる時間を十分に確保できていないことなどが影響しているのではないでしょうか。

 さて、子どもたちが両手のひらでしっかりと大地に触れることが大切だと感じた私は、低学年の体育授業で意図的に手のひらを使って体を支える運動を取り入れました。

 ひとつは手足走りという運動です。両手のひらを地面に着き、しっかりと体を支えながら、手足を使って走るのです。この時、腰の位置をできるだけ高く保つことにより全ての体重が両手のひらにかかる感覚を体験させます。

 もうひとつは、カエル倒立と呼ばれる運動です。両手で全体重を受け、バランスをやや前に傾けて足を浮かせます。低学年の子どもたちは、筋力は微力でもバランス感覚は抜群です。すぐに両手で両足を浮かせる重心移動を覚え、頭の位置、両手の位置、両足の浮かせ方などをマスターします。

 これらの運動の発展形が、頭を着いて両手で体を浮かせる三点倒立であり、やがては、壁倒立や倒立へと進みます。

 これらの運動の前段階として、一年生で取り組んだのが両膝立ちの姿勢から、合図に合わせて前に倒れ、両手で支える運動です。前方に倒れる際には、両手のひらを着いて体を支える、その時に両肘を曲げてクッションにすることを実際の動きを通して指導するのです。両膝立ちは、段階を追って最終的には、立位からでも両手のひらと肘のクッションを使って上手に体を支えることが出来るようになります。

 このように運動には、子どもたちに基礎的な感覚、この場合は腕支持感覚ですが、これらを段階的に陶冶することが必要になります。ですから、高学年になっても前転が出来ない子どもには、どのような感覚や力が欠如しているのか、冷静に見極め、足りないところに立ち戻って指導することが必要になります。

 子どもたちは、経験を通して、大人たちがいとも簡単に行っている運動ができるようになるのです。だからこそ、子どもたちに必要とされる力を見極め、手順を追って指導することが、教師としての役割であり、親としての責任であると思います。

☆何よりも大切なのは、物事の基礎となっていることを知ることです。

あとは、段階と手順を追って指導さえすれば、できるようになるのが子どもです!

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