逆さ感覚  「教育は愛」No.116

低学年

体育授業ー9(低学年)逆さ感覚を身に付けさせること

◆コウモリ振りという運動遊びがあります。両惹きを鉄棒にかけて、腕と上体を使って、ブランコのように振れを楽しむ運動です。最初、膝の後ろのひかがみに鉄棒が当たるのが痛くて戸惑うこともありますが、サポーター等を使えば、楽しく習得することができる運動です。

 よく、鉄棒の基礎は逆上がりにある、と誤解されている方が多くいらっしゃいますが、両脇を閉めて体を持ち上げる逆上がりよりも、膝をかけて振りを楽しむ動きや技を基本とした方が、発展性に富み、鉄棒運動の特性を味わうのに適しているのです。

 さて、平成の時代、私は子どもたちに鉄棒運動の授業を指導する度に、逆さ感覚の育成の必要感を強く持っていました。

 1年生のC君に鉄棒遊びを指導していた時です。C君は逆さになった途端に全身を硬直させ、握っていた鉄棒を放そうとするのです。

 このように逆さ(頭と腰の位置が逆転した状態)になったと同時に手を放そうとする子どもは、平成12年頃から、顕著に見かけるようになりました。

 どうして、C君は手を放してしまうのでしょうか。実際に補助をしながら観察すると、C君の腰と頭が逆転した時、自分の体が地面に対してどうなっているのか分からなくなり、不安から早く地面に着地したいと思って鉄棒から手を放してしまうという結論に至りました。

 頭が腰より上にある状態では、鉄棒から手を放せば、すぐに地面に着地できます。あの感覚なのでしょう。

 C君に不足していたのは、逆さになっている時の感覚だったのです。私は、前回り下りや布団干しと呼ばれる鉄棒の上で体をくの字に曲げる運動遊びをさせながら、「今、逆さになっている時だね、こういう時は絶対に鉄棒から手を放してはいけませんよ。」と繰り返し、補助をしながら丁寧に指導を続けました。

 その結果、逆さ感覚が身に付いたC君は、みるみる逆さのスリルを楽しめるようになり、冒頭のコウモリ振りや、コウモ振りを数回してから着地する運動遊びの虜となりました。

 このように基本的な感覚が身に付いていない子どもは、年々増えています。幼少期の外遊びの欠如が原因です。

 ですから低学年の内から、カエル倒立や、壁倒立、手足走りなど、腰が頭より高くなる運動遊びを小刻みに継続する必要があります。逆さの状態は、日常生活の中では決して経験できない状態なのです。

 令和の時代、体育授業こそ、逆さ感覚や回転感覚、高低の感覚などを経験させることができる最後の砦なのです。

☆逆さになっても、回転しても、高いところへ登っても、自分の体が地面に対してどのようになっているのか、認識できる基礎的な覚を養いましょう!

 感覚は自然然発生するものではありません。意図的に大人が身に付けさせていくものです!

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