体育授業ー13(中学年)鉄棒ブームをつくる
◆ある学校に赴任した早々、体育授業に熱心に取り組まれている先輩教師から「本校の子どもたちは、鉄棒運動が苦手で、回り技をできる子どもは、全校でも数えるほどです。」とアドバイスしてくれました。
これから、この学校の体育授業を体育主任としてリードしていく私の立場を思いやってのアドバイスでした。
なるほど、休み時間の様子を見ていると、鉄棒が数多く設置してあるにもかかわらず、鉄棒で遊ぶ子どもは皆無でした。
この状況を打破するためには、まず自分の学級から鉄棒遊びの楽しさを味わわせることから始めようと思い立ちました。
3年生の担任でしたから、鉄棒遊びを習得させるには適した発達段階です。私は、子どもたちの実態から、後方膝掛け回転を課題に据え、授業に取り組みました。
3本の支点がある膝掛け回転は、2本の支点で回転する支持回転より、取り組みやすく、技の習得も簡単です。しかも、膝を掛けて振ることの楽しさを十分に味わうこともできます。また、片膝から両膝に移り、そのままコウモリ振りをして着地するという技や動きの発展も導くことができる好教材なのです。
休み時間を活用して、運動能力の高い子どもたちと一緒に鉄棒に行き、私が指導しようとしている後方片膝掛け回転を指導します。すぐにコツをつかみ、技を達成させると、その次の段階へ、子どもたちの興味を引き出しながら指導します。
そして、授業では、この子どもたちをお手本にして、子どもたちに課題を提示させます。
教師は、言葉や図で子どもたちに課題を提示しようとしますが、実際の動きを見せて具体的なイメージを持たせた方が遥かに効率的です。教師が示範してもよいのですが、できれば友達の動きを提示した方が、子どもたちの意欲も高まります。
授業に入ると、私がイメージしていた動きをできるようになった子どもを積極的に称賛していきます。時には、握手やハイタッチ、子どもたち全体の前でやってもらうこともあります。
ただし、できたばかりの子どもに、いきなり全体の前でチャレンジしてもらうのは、子どもによっては、迷惑な場合もあります。全体の前で紹介する時には、必ず本人の承諾を得ておきましょう。
なかなかできるようにならない子どもには、何が原因なのか、を丁寧に観察します。逆さ感覚の欠如、鉄棒の握り方、上半身と下半身の連動等々、チェックポイントは幾つかあります。そして、その子の躓きを見つけたら、段階を追って丁寧に指導するのです。
この時、子どもたち同士の学び合い、教え合いを学び方として指導しておくと、教師は躓いている子どもにたっぷりと時間を割くことができます。
できるようになること、これが子どもたちの自信と意欲を著しく向上させます。学習が深まってくると、技や動きのバリエーションも増え、休み時間に積極的に挑戦するようになります。
休み時間に楽しそうに鉄棒で遊んでいる子どもの周りには、学年を超えて、やってみようという子どもが近づいてきます。そして、子どもたち同士で教え合いが始まればしめたものです。鉄棒ブームは、学級を超えて広がり始めます。
この時、教師が側にいて、アドバイスしたり、できている子どもを誉めたりするとブームは加速します。教師が、休み時間に鉄棒に足を運ぶこと、それもできれば、一人より二人、二人より三人と教師の人数も多ければ、子どもたちの意欲も比例して高まっていきます。
☆子どもたちが学びたくて、うずうずするような環境を作れるのは大人だけです!
子どもたちの自然発生的な環境を期待するのではなく、大人が積極的に環境を作っていきましょう!