体育授業ー15(中学年)好奇心に火を点ける
◆中学年の子どもたちは、好奇心が旺盛です。教室にいても、運動場にいても、目新しいものを見つけては喜び、それを自分たちの遊びや生活の中に取り入れてしまいます。
H君も好奇心旺盛な3年生の男の子です。好奇心は時としてやんちゃな行動に出て、私からもしばしば叱られていた大変元気な子です。
マット遊びの授業でした。体育館で跳び前転に挑戦です。跳び前転というのは、一度空中に身を置き、両膝を曲げるようにしながら両手で着手して勢いを吸収してからクルリと前転する動きです。
私は、前転する手前に跳び箱の頭を横にして置き、子どもたちの挑戦を促しました。嬉々として、横向きの跳び箱を両足で踏み切って跳び越え、クルリと前転する子どもたち。その動きの高まりは、私の予想を超えるものでした。
そこで、「体育館にある物は何を使ってもいいから、みんなの跳び前転がもっと上手になるよう工夫してごらん」と投げかけてみました。私の挑戦を目をまん丸にして聞いていた子どもたちは、話しが終わると同時に蜘蛛の子を散らすように体育館中を物色し始めました。
数分後、思い思いの用具を持って、自分たちのマットへ集まります。ボール、踏み切り板、高跳び用のゴムひもとスタンド、坂板、跳び箱の下の段、ハードル、ガムテープ・・中でもH君は、ひとつだけでなく、嬉しそうに幾つも引き摺ってきました。
さて、自分たちが用意した物をマットにセットして練習を開始します。私は、この中から、高すぎる跳び箱や高跳び用のゴム、無理なボールの位置など、危険を伴うセットについては、理由を説明しながら修正をしていきます。
高さを求めた跳び前転では、高跳び用のゴムひもが大変効果的でした。高さも一人ひとりの能力に合わせて自分たちで調整していました。
また、ガムテープは、踏み切る位置を何段階も分けて、いかに遠くから跳びこむかを挑戦するのに効果的でした。
これらは、指導方法の中ではオーソドックスなものであり、教師が学習カード等に示し、子どもたちに準備させるセットです。
結果としては、同じような練習になるのですが、子どもたちにとっては、自分たちが考え、工夫したということが格別な満足感となります。場を自分たちで準備したという過程に意味があるのです。
体育授業におけるアクティブラーニングと言ってよいでしょう。
この授業以降、この子どもたちは、体育授業の場作りでは、どこからともなく、一品を携え、工夫するようになったのです。教師から指示された内容だけではなく、自分で考え、工夫する、クリティカルシンキングに通じる自主性の芽が出てきたのです。
そして、その先頭に立ってくれたのが、やんちゃで元気なH君でした。学級の子どもたちもH君のアイディアには、一目置き、いつしかアイディアリーダーとして認めるようになっていました。
☆好奇心は子どもの創造力の原点です。
大人が、既成概念を押し付けているだけでなく、時には存分に自分で考えさせる経験を積ませてあげることが大切です!