管理職ー4 苦情に来た保護者を応援団に変える
◆保護者の方が直接、校長室を訪ね、相談にいらっしゃる場合がしばしばあります。相談と言っても、担任に対する苦情が一番多いケースかも知れません。私は、まずじっくりとお話しに耳を傾けます。そして、学校で子どもたちが学習している様子、教師が熱心に指導している様子を実際にご参観いただける絶好の機会と考えることにしました。校長の対応の仕方ひとつで、苦情を言いに来た保護者の方が、強力な学校応援団になってくれる場合も少なくありません。
校長時代、おばあちゃんが相談に来ました。
聞けば、嫁(子どもの母親)が、担任の指導について悩んでいる。実際にどのような状況なのか、確かめたくて来校した、ということでした。
私は、丁寧におばあちゃんのお話を聞いた上で、お孫さんや担任の様子について、説明しました。そして、実際に授業の様子を参観することをご提案し、おばあちゃんと一緒に校長室を出ました。
学校では、授業参観や懇談会は定期的に実施しているものの、保護者の皆さんに教育活動の様子について校長が説明させていただく機会は滅多にありません。このような機会は、校長にとっても子どもたちの学習の様子や教職員の努力している姿を伝える絶好のチャンスです。
お孫さんの学年だけでなく、色々な学年、学級の様子をご参観頂きました。
その際、荷物の整理の仕方や座席配置、教室の設備等についても、細かく解説させて頂きました。おばあちゃんは、ご自分がPTAの役員をやっていた時との違いに時折驚いて、お孫さんの教室へ。
ひとしきり参観し終わって、校長室へ戻ると「校長先生、今日はありがとうございました。学校の様子が大変よく理解できました。うちの嫁も最初の子どもなので、まだ母親になり切っていないのです。私からもよく話しておきますので、これからも孫のこと、嫁のことを宜しくお願い致します」と笑顔でお話ししてくださいました。
私は、本日のご来校にお礼を申し上げるとともに、今後もお孫さんに対する教育に全力を尽くすことをお約束しました。
また、あるお父さんは、担任教師の指導が乱暴であるとお母さんから聞き、腹を立てて来校されました。今日、予定されている個人面談にもお母さんは欠席する、と言っている。実際のところ、どうなっているのか確かめに来た、というご相談です。
この時もお父さんのお話しを丁寧にお聞きした上で、校内をご案内し、お子さんの授業の様子をご参観いただきました。
お父さんはお母さんからお聞きしていた担任のイメージと違ったのでしょう。
「全然、乱暴な感じはしませんね。」と静かに頷かれ、担任教師の指導ぶりを丁寧に参観されていました。
そして、お帰りになる時に「ありがとうございました。家内は個人面談に出席させます。担任の先生が一生懸命に、愛情をもってご指導してくださっているのがよく分かりました」と微笑まれました。
さらに「千葉校長先生は、沢山の子どもたちと接しているのですね。ぜひ、うちの息子が卒業するまでこの学校に居てください」と嬉しいお言葉まで頂戴しました。
保護者の方は、我が子の学校での様子が気になって仕方ないのです。決して、闇雲に学校を批判しているのではありません。願いはひとつです。「子どもの明るい未来を拓く」この普遍的な願いをしっかりと共有して、建設的な意見を交換していけば道は開けるはずです。
そして、その舵取りは、校長や教頭、管理職の使命です。
保護者も、教師も、冷静に、建設的に、真剣に、子どもたちの教育についてじっくりと考え、熟議していきたいものです。