生涯学習-4 小脳を刺激して心をはぐくむ
◆「豊かな心をはぐくむ」というフレーズは、学校教育でも頻繁に使われているものです。しかし、心とは一体何なのでしょうか?
辞書を引くと「人間の体の中に宿り意志や感情などの精神活動のもととなるもの。精神の働きそのものや、その現れ、また、それをつかさどる場所としてとらえられる。」とあります。いずれにしても、脳の働きに深く関係していることは間違いないでしょう。
それでは、人間の心を豊かにするためには、どのようなアプローチが考えられるのでしょうか。
脳の働きで考えると、知的能力の向上には、前頭葉が深く影響しているようです。
そして、精神的な面については小脳への刺激が有効とする説があります。現在、脳科学は日進月歩の勢いで解明されているので、最新の説によればもっと細かい脳の部位まで特定できるかも知れません。
ここで、小脳が人間の精神=心に関係していることにフォーカスしてみましょう。
小脳は理屈ではなく、実際に体を動かす身体活動によって、インプットされるようです。代表的な例は、自転車の乗り方です。
自転車を乗るのに、前頭葉を使って、ハンドルの握り方やペダルのこぎかたをインプットしても、自転車を上手に乗りこなすことはできません。
よく、お父さんが、自転車の荷台をつかんで補助して練習を繰り返し、今日もお父さんが支えてくれていると思ったのに、いつの間にか手を放していて乗れるようになったという記憶は多くの皆さんにもあるのではないでしょうか。
これを可能にするのが小脳だというのです。
心も同様です。
掃除をしたり、電車でお年寄りに席を譲ったり、道端に落ちているゴミを拾ったりすると、何と表現してよいやら、とても心地よい風が体を吹き抜けます。
これが、心の豊かさにつながるのではないでしょうか。
このことをある教育関係者は「心は理屈ではない。知識でもない。実践、行動が充分に熟したところで、気化したものが心(精神)である」と表現しています。
子どもの頃、母親から「嘘をついてはいけません、正直に言わなくてはいけません」と指導されたことを思い出し、「教室のガラスを割ってしまったのはぼくです」と先生に正直に話した時、叱られることよりも母の言いつけとおりに正直に話せたことの満足感が体を巡ったものです。
この積み重ねが、心に豊かさを与えるのでしょう。
僧侶の世界には、修行と呼ばれる行為があります。
早朝から掃除をして、読経し、食事も質素に自分の生活をコントロールします。
これを続けていく内に、精神が鍛えられ、悟りをひらくのでしょう。
故酒井雄哉氏のような「千日回峰行」に至っては、常人のはかり知ることなど到底できない世界ですが・・・。
修行は、身体活動、実践を伴うものばかりです。修行によって、心は陶冶され、高尚な人格が形成されるのではないでしょうか。
このように考えると、子どもたちの豊かな心をはぐくむためには、善行を重ねることが効果的なのではないでしょうか。
善い行いをして、スッキリとした心持を味わう、この味が忘れられずにまた善行を重ねる。
そして、大人は子どもたちの行った善行を大きく誉めることにより、子どもたちの善行のループをさらに継続させることができるのです。
※(「教育は愛」No.24 便器を磨けば心も光る でも、今回の記事に類する内容を書かせていただいております)