英国の学校で見聞したこと 「教育は愛」No.61

学校教育

学校教育ー22 英国の学校で見聞しこと

◆担任時代、私は英国の小学校へ約1ヶ月間通いました。そこで、見聞した経験は、日本の教育とは異なることが多く、とても新鮮でした。しかし、教師の教育にかける情熱や子どもたちの好奇心、向上心は日本と変わりありません。国が違っても、子どもたちは未来を切り拓く大切な宝物です。

 私は、文部科学省(当時は文部省)の若手派遣教員研修に参加する幸運に恵まれました。行先は、イギリスとアイルランドです。

 1ヶ月間は、ロンドンやマンチェスタースターなどの教育関係施設の見学、途中、アイルランドへも見学に訪れました。

 そして、もう1ヶ月間は、ホームステイです。私は、イングランド北西部のランカシャー州にある人口2万4千人ほどのオームスカークという町の小学校教師の家でお世話になりました。

 イアンさんとジルさんご夫妻の家です。ご主人のイアンさんは、民間企業にお勤めでした。ジルさんは、スケルマスデイル小学校の教師をなさっていて、毎日自家用車で通勤されます。 

 私は、ジルさんと一緒に小学校へ通い、授業の様子を見学したり、時に、授業を体験させていただいたりしました。

 学校は定時に終わり、ジルさんと一緒に買い物をして家に戻ります。

 学校の子どもたちは、とても明るく、素直で、私のことを物珍しさもあったのでしょうが、快く迎え入れてくれました。映画、ハリーポッターに登場する子どもたちそのままでした。

 先生方も大変フレンドリーで、私を仲間として迎え入れてくださり、色々と話しかけては気を遣ってくださいました。

 私は、時々習字を披露したり、一緒にサッカーやバスケットボールを子どもたちとプレーしたりして、ゆったりとした時間を過ごさせていただきました。

 私がお世話になった学校の先生方は、学年を専門にされているようで、日本のような持ち上がりではなく、3年生の先生は、ずっと3年生を受け持つようなシステムでした。お世話になっているジルさんは、小学校に上がる前のナースリーという学年の担当でした。

 先生方は、英国紳士淑女ばかりで、素朴で、とても親切でした。スタッフルームでのコーヒータイムは、あたたかいコミュニケーションが弾み、居心地は最高でした。

 授業は、一斉学習が基本で、教師が一方的に講義するスタイルでした。1学級の子どもの人数は15人ほどで、教師の目が行き届き、どの学級も規律ある授業でした。

 お昼の時間は、学校のスクールランチ(給食)と自宅から持参したパックランチ(お弁当)を食べる子どもが半々くらいでした。毎朝の健康観察時に、今日の昼食を教師に申告します。申告されたスクールランチの食数に基づいて調理室が準備していました。

 私は、子どもたちと一緒に食堂でスクールランチをいただきましたが、必ずデザートが1品付いている結構なボリュームの洋食でした。

 学校では、私が居るところには、常に子どもたちの輪ができたものです。イギリスの田舎の子どもたちにとって、東洋人は物珍しかったのでしょう。昼食時には、お水を運んでくれたり、自分のパックランチを見せてくれたり、嬉しそうに話しかけてくれました。

 ちなみに、子どもたちのパックランチは、リンゴが丸ごと1つとバターかピーナッツクリームが塗ってある食パンが数切れ、あとは、ポテトチップスといった感じです。日本の子どもたちが持ってくるような、豊富なおかずに彩られたキャラ弁などとは全く趣を異にするものでした。入れ物も、バスケットが多く、いわゆるお弁当箱にあたる物は見当たりませんでした。

 しかし、子どもたちがランチを楽しみにしていて、美味しそうに友達と談笑しながら食べている姿は、日本もイギリスも少しも変わるところはありませんでした。

 放課後、高学年の子どもたちと一緒にサッカーをしたのですが、グラウンドではなく、ゴルフ場のようなものすごく広いフィールドでした。

 その広々とした草原の上で、私は子どもたちと一緒に思い切りボールを蹴っては、全力で走りました。

 子どもたちの登下校は、保護者が付き添います。

 放課後、子どもたちを見送っていると、ある保護者が見慣れぬ東洋人をキッと睨み、我が子を奪うようにして帰っていったのに、驚きと寂しさを覚えました。

 人種を越えて理解し合うことの難しさを実感したものです。

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