家庭教育ー10 家庭学習の時間から考えること
◆平成の時代に家庭学習の時間の目安として子どもたちや保護者に提示したのは15分間を基本とするものでした。1年生では15分間、学年が上がるに従って15分間ずつ加算していくというものでした。
15分間×学年、こうすると小学校1年生で15分間からスタートして、中学校3年生では、135分間、2時間15分間という計算になります。
しかし、令和の時代に入り、基本とするのは15分間でよいのか?と、考えるようになりました。
そもそも、15分間というのは、テレビ番組から思いついたものでした。子どもたちが、テレビ番組を視ている、すると約15分間に1回、CMが流れます。
つまり、子どもたちの体の中には、15分間でブレイクするという時間単位が刻み込まれているのではないか、ということが15分間の根拠でした。
事実、学級や学校で、15分間×学年を家庭学習の時間の目安として提示し、実践したところ、ご協力いただいたご家庭では、明らかな成果が表れたものです。そして、成果が表れたご家庭は、毎日、継続されたことが特長としてあげられます。定着するまで継続されたのです。
また、家庭学習の時間については、机の上に集中して座るところから始めてもらいました。
家庭学習の時間15分間×学年の時間、テレビや音楽を聴きながらではなく、机に集中して座れるようにするのです。例え、最初はマンガ本を読んだり、自由帳にお絵かきしたりしてもOKのところから始めてもらったのです。
大切なことは、毎日、決まって机に15分間×学年の時間だけ座っていることに主眼を置いてもらったのです。一定時間、机の前に座っていることが習慣として定着できれば、あとは少しずつ活動内容を学習に変更していけばよいのです。
これが、平成の時代に私が実践した家庭学習の習慣づくりと時間設定でした。しかし、令和に入ると子どもたちの体に刻まれている単位時間が変化してきたように感じています。
小学生の将来就きたい職業には、男女ともユーチューバーがランクインしています。
各種アンケート調査の結果を見ても、実際に子どもたちと話をしても、今の子どもたちは、家庭ではテレビよりもYouTubeを視ている時間が圧倒的に多いのです。
これは、タブレットPCやスマホ等の普及も影響しているでしょう。
デジタルネイティブの子どもたちは、取説なしで、端末を手にしただけで、使い方を探り、習熟していきます。
しかも、家族団らんの場ではなく、自分の部屋で自分の好みのジャンルの動画や音楽を自由に、いつでも、いつまでも、楽しむことができるのです。
こうして考えると、15分間ごとにCMが入るという私が設定した単位の根拠は成立しません。
子どもたちの体に刻まれている時間は、その子どもによって千差万別です。
中には、10時間以上でもゲームをやり続ける、やり続けたい、という子どももいるくらいです。
画面を見ていて一休みするブレイクタイムは、自分で意図的につくるか、保護者など第3者によって強制的につくってもらうしか方法はありません。
こうして考えると、平成の時代よりも令和の時代の方が、学習習慣をつくる基礎となる単位時間の設定が難しくなっているのかも知れません。
子どもたちの意識を変容させ、自主的に、自分を律する力を身に付けさせなくてはならないからです。
今は、既存の単位時間を活用するのではなく、子どもたちにとって必要と思われる単位時間を提示し、身に付けさせていかなくてはならないのです。
今まで以上に、大人の意識と繰り返しの定着が必要になってくるでしょう。
変化している子どもたちの生活リズムを理解し、その上できちんとした家庭学習の習慣を確立させようとする大人側の意識を明確にしていくことが求められています。
そして、子どもたちの未来を拓く家庭学習の習慣を定着させるためには、子どもたちとの対話が必要不可欠です。
どうして、学習することが必要なのか?家庭学習を習慣づけることが必要なのか?将来の夢は?大切にしたいものは?人生とは?・・・などなど。
丁寧に、学校でも、家庭でも、子どもと話し合い、今、必要なことを一緒に考えていく習慣を大事にしたいものです。そうすることで、デジタルに埋没せず、デジタルをツールとして使えるようにする自律した子どもをはぐくむことができるのではないでしょうか。
家庭学習の時間を考えているうちに、話の内容は、大きく広がってしまいました。