恩師ー1 N先生が大好きで楽しく登校できるようになりました
◆不登校や学校嫌いは、昭和から時代が変っても大きな社会問題のひとつです。
その理由は様々です。しかし、時に教師の影響が左右することもあります。
私は、小学生時代、自分の問題行動を棚に上げ、叱ってくださった担任の先生を逆恨みして、学校嫌いに陥りました。
しかし、学年が変わり、初めての男性の先生に担任していただいてから、学校が大好きになったのです。
担任の先生が大好きになって、学校へ通うのが楽しくなった、という子どもは、私以外にも結構いるのではないでしょうか?
不登校児童生徒の問題は、現在深刻な社会問題のひとつと言えるでしょう。
実は、私も小学校4年生の時、母親に「なぜ、学校へいかなくちゃいけないの?学校行かないでいいかな?」と問いかけたことがあります。
江戸っ子気質の母は、いつもなら迷いなく即答してくれるはずでした。
しかし、この時は「そう・・・」と答えるだけでした。この時の母の淋しそうな横顔は今でも忘れられません。
さて、5年生になると新任の男性教師が担任になりました。
私にとっては、小学校で初めての男性教師の担任、しかも休み時間には一緒に遊んでくれるN先生。
私は、N先生が大好きになり、それから学校へ行くことが毎日楽しくて仕方ありませんでした。
今まで、授業は休み時間までの忍耐を要する退屈な時間でしたが、N先生が担任になってからは、ノートにN先生が黒板に書かれたことを写すようにまで私は変化したのです。
この時の私は、N先生に褒められたい、好かれない一心で小学校へ通っていました。
よく、「担任が変われば子どもは変わる」と先輩教師がことある度に教えてくれました。この言葉通りでした。
中には、授業が楽しいから、勉強が大好きだから、友達と関わることが好きだから、学校へ通うのが好きになるという子どももいることでしょう。
しかし、私のように担任の先生が好きだから、学校へ通うことが好きになる子どもも結構な数いるのではないでしょうか。
幼い子どもを見ていると、優しく遊んでくれるお兄さんやお姉さんよりも最終的には、ママのことが大好きです。
孫たちを見ていても、調子のよい時は私になついても、最後は必ずママのところへ擦り寄ります。
ママの言葉を口真似し、ママの行動をそっくりにしようとします。
これが、まねぶ、つまり学ぶことの初歩です。幼子は純粋にママのことが大好きだからママのようになりたいのです。
同様に私も、N先生のようになりたくて、N先生の行動や口真似をしていました。
やがて、N先生と同じ職業、小学校の教師になることを将来の夢とするようになりました。
小学校5年生で、自分の将来の職業を明確に意識したのです。
しかし、夢は持ったものの努力をしない小学生時代でした。私が、本気になって努力するようになるには、中学校1年の3学期を待たなくてはなりません。
このように何かを好きになるメカニズムのひとつに、ある人物を尊敬することによって特定のものや事が好きになるというものがあります。
プロ野球で活躍する岡本選手に憧れ、巨人が好きになり、プロ野球、野球が好きになる。中には、一生懸命に練習して本当にプロ野球選手になる人もいるでしょう。
不動の信念を持つ経営者に憧れ、その人の会社に入社する。
何かを好きになるのに、ロールモデルとなる特定の人物の存在を誰しも持っているのではないでしょうか。
ロールモデルのことを人生航路の羅針盤、人生の師と表現することもできます。
どんな境遇にあっても、その人のようになりたいと思う一心から脇道にそれることなく、迷わずに人生の歩みを進めることができるのです。
そんな人生の師と出逢えれば、人生という長い道のりの旅も楽しくて、楽しくて、たまらなくなるのではないでしょうか。
子どもが学校を好きになるメカニズムには、教師の存在も大きく左右しています。
そのことを私たち教師は、謙虚に自覚したいものです。