小学校教科担任制 「教育は愛」No.83

学校教育

学校教育ー28 小学校教科担任制による変化

◆小学校高学年に教科担任制が導入され、各自治体では学校の実態に応じたカリキュラムマネジメントが進んでいます。当初、懸念されていた学級経営が担任の思い通りにできないと言われたデメリットも学校の創意工夫により改善され、むしろ数多くのメリットを耳にするようになっています。

今後、国は小学校3・4年生にも教科担任制を導入しようとしています。

教科担任制の影響は、学校でどのように現れているのか、幾つか具体的にあげてみましょう。

私は、体育科教育を自分のライフワークとして取り組んでいますが、そこで行き着いたテーマが「体育受業と学級経営」です。学級経営を充実させ、子どもたちにとってよい体育受業を展開する。子どもたちにとってよい体育受業を行うことにより、子どもたちが安心して生活できる学級経営を充実させる、双方の関係性等について研究を重ねてきました。

さて、そのテーマで、ある勉強会でお話しさせていただいた際に、「教科担任制における体育受業と学級経営の相関関係は、従来のように存分に発揮できないのではないか?」という指摘をいただきました。確かに、学年全部の体育受業を行うことは、自分の学級の課題を改善するような単元の工夫よりも、全学級に共通する課題で単元を工夫することが優先されるのが現実だと思います。

本来なら、体育受業は学級経営に深く影響を及ぼすので、各学級の実態に応じた体育受業を展開したいところですが・・・。

また、今まで小学校教育では、担任の影響が絶大とされることから、しばしば学級王国と揶揄されたこともあります。教科担任制は、学級王国から完全に脱却しました。学年の教師全員で、どの学級にも関わることができ、教師間の生徒指導面での共通理解もより図れるようになっています。

子どもたちにとっても、相談できる教師が担任だけでなく、自分が相談しやすい教師を選んで悩みを打ち明けることもできやすくなりました。そして、このことは、子どもたちだけでなく保護者にとっても、担任だけに相談するのではなく、普段の子どもの様子を知っている学年の教師、複数に相談できるようになっていると思います。

よい意味で、教科担任制の導入は、小学校における学級担任という概念を大きく変化させているのではないでしょうか。

そして、国が主張しているように教材研究の教科数も今までより減少するため、働き方改革にもつながっています。高学年の教師は、自分の考えを学級の子どもたちに浸透させることが100%できないことにもどかしさを感じながらも、教材研究については、軽減されていることを実感しているようです。

今まで、教師の中では、高学年の担任は、宿泊学習もあるし、学校行事でも中心となる子どもたちを指導するため、「大変だ」という意識が根強くありました。しかし、教科担任制が導入されてからは、年休を取得しても、丸一日、学級を自習にすることなく、学年の教師と調整を図りながら自習を最小限におさえることができるという利点から、子育てや親の介護が必要な教師が、進んで高学年を希望するという動きも見えてきました。

 小学校教科担任制は、ICTの導入と並び、令和の教育を大きく変容させていくひとつの鍵になっていると思います。この鍵を子どもにとっても教師にとっても有効な形に導くためには、教師一人ひとりの発想の転換や知恵を出し合うことが求められるのではないでしょうか。

 そのためには、今後、対象学年にも広がりを見せるであろう小学校教科担任制を前にして、決して後ろ向きにならず、いい形で自分の学校で実践してうこう!という積極精神をもって臨むことが大切だと思います。

                 前へ、前へ、明るい方へ!

 

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