コラムー16 軸がブレない魅力的な方
話しをしていても、仕事を一緒にしていても軸が全くブレない素敵な方がいます。俳優で言えば、既に鬼籍の人となっていますが、渡哲也さんや高倉健さんのような方です。その方の所作一つひとつが絵になり、シビレてしまいます。
仕事のことでトラブルがあっても、慌てない、騒がない。しばらく考えた後、説得力のある言葉で幾つか指示をして、迅速にトラブルを解消していきます。
他人の意見は聞いても、決して動揺して心を動かすことはありません。その方には軸がしっかりとあり、その軸は決してブレることはありません。
仕事だけでなく、人として人生の軸を持たれ堅忍不抜のものとしている方、憧れてしまいます。
教育委員会時代、私が担当していた業務のことで、魅力的な上司に報告に行きました。報告の内容は極めてよくありません。その方はじっと私の報告に耳を傾けてから、幾つか質問されました。そして少し間を置いてから「この件については、〇〇としよう。君が気にすることはないよ。決して慌てないことだ」と、まず私のことを気遣ってくださってから、事後の解決策について具体的に指示してくださいました。
この方は、声を荒げたり、大きな声を出して浮かれたりすることは決してありませんでした。常に感情を一定に保たれ、かすかな微笑みを浮かべながら他人と接しています。それでいて、この方の上司に対しても、諂うこともなく、部下を守る時は、わが身のことをお構いなしで上司と掛け合ってくださいます。部下が惚れてしまう上司でした。
また、趣味も多岐にわたり、その技術の向上にも熱心でした。ご自身の人生に対する軸を持たれ、ご自身の人生を悠々と歩まれている様子でした。その姿勢がこの方の風格となって表れ、周囲の空気を穏やかに、それでいて引き締まったものに変えていました。
この方は、ご自身の人生の軸を太く、揺るぎないものにするために、きっと数え切れない程の修羅場をくぐり抜けて来られたのでしょう。学び、悩み、失敗し、他人の所為にすることなく、自分事として捉えながら、人生訓を構築されてきたのだと勝手に想像してしまいます。ただ、エリート街道をまっしぐらに進んでこられたのではない、何かを感じるのです。
◎そして、人生というドラマ自体を楽しむ余裕を持っているようにも感じられます。物事を見るにも、幾つものチャンネルを用意して見る、ゴールに至る道は、決して1本ではないことを、私達に仕事を通して教えてくださいました。何本もの道を持っているから、この方の軸はより一層太くなっているのでしょう。
仕事も人生も、私が思っている以上に豊かで、様々な景色に彩られているのでしょう。限りある人生です。豊かに、楽しく、慌てず、騒がず、ブレずに生きていきたいものです。
誰も見ていない小さな交差点でした。信号が赤になりましたが、一人は進もうとします。私もついて行こうとしたら、魅力的な上司はピタリと止まり、信号を指さして「赤だから」と言って微笑みます。
ブレない!