管理職ー10 校長室を開放して学んだこと
◆校長室に入るのは敷居が高い、とよく言われます。人によっては、校長室へ入る時は、よほどの悪さをして校長先生直々にご指導をいただく時だと言い切った人もいます。
校長室は、難しい案件などに決断を下さなくてはならない時に、校長が心を静め、最終判断をするために個室になっている、ということを先輩から聞いたことがあります。
しかし、年がら年中難しい案件に追われている訳ではありません。私は、校長室の敷居を低くする工夫をし、保護者・地域の方、教職員、子どもたちにまで解放しようと試みました。
そこで学んだことは多々あります。
1校目の時は、校長室だけ2階の離れ小島でしたので、校長室の扉だけ開放しておきました。
2校目の時は、事務室側の扉も開放し、校長室、事務室、職員室に空気が流れるように工夫しました。
そして、扉と窓は開放し、扉には暖簾を下げて校長室へ入りやすくしておきました。
それでも、校長室へは入りにくいものです。廊下側の窓を解放しているので、廊下を通る保護者や地域の方を確認できます。そこで、暖簾を上げて声をかけ、校長室へ誘うことにしました。
中には、「校長室へ入るのは初めてです」と恐縮しながら、珍しそうに校長室の中を眺めていらっしゃる方もいました。
丁度、新型コロナウイルスが2類から5類になった年です。ポストコロナ禍の扉が開かれたと同時に今まで閉め切りだった校長室の扉が開放されているのを見て、保護者や地域の方、教職員や子どもも明るい空気を感じてくれたようです。
やがて、子どもたちも少しずつ校長室へ足を運んでくれるようになりました。2時間目と3時間目の間には、子どもたちがたっぷりと遊べるように30分間の休み時間を設定しています。その30分間休みになると、「校長先生、相談があります」「校長先生、遊びに来ました」「校長先生に見せたいものがあります」など、1年生から6年生まで沢山の子どもたちが来訪してくれるようになりました。
子どもたちから直接聞く話は大変興味深いものです。
友達関係のこと、家族のこと、担任の先生のこと、進路のこと、趣味のこと、習い事のこと等々、色々な情報を教えてくれました。
また、子どもたちの中には、自分のトランペットを家から持ってきて、演奏してくれる子どもまでいました。900人を超える子どもたちが在籍している学校です。
様々な素敵な才能に恵まれている子どもたちの特技や自慢を聞くことは教師として、とても嬉しく、楽しい時間です。
また、保護者や地域の方も、しばしば相談に訪れてくださいます。
「千葉校長先生なら相談に乗ってくださると思って」とお世辞を言いながら、色々なことをお話しくださいます。これも、自分にとっては貴重な情報です。
教職員も同様です。仕事のこと、プライベートなことなど、相談に訪れてくれました。
校長室の敷居を低くして、沢山の方々が、特別な用事がなくても、校長室を訪ねてくれるようになると自分の考えていた学校像、子ども像、教職員像、保護者・地域像が日ごとにアップデートされていくのを感じています。
そして、学校に期待していることを具体的に理解できるようになりました。期待には応えなくてはなりません。校長の判断でできることについては、積極的に実現するように努めています。
もちろん、全てを実現させることはできませんが、話に耳と心を傾けることならできるのです。
校長は、自分で思っているより他人からは近寄りがたい存在と思われています。本音でコミュニケーションをとれるようにするためには、校長から相手に近づいていく努力をする必要があることを、校長室を開放することにより学ばせていただいています。