体育授業ー23 (高学年)子どもの人数分だけ「めあて」はあります
◆鉄棒運動は「できる、できない」がとてもハッキリする運動です。頼りになるのはたった一本のバーしかないのです。このバーの上では、逃げも隠れもできません。見事な技を楽し気に披露してくれる子どももいれば、額に脂汗をにじませてぶら下がっているのがやっと、という子どももいます。
しかし、どのような子どもにも明確なめあてがあれば、めあてに向かって懸命に努力することの尊さに差などありません。
大切なのは、教師が目に前の子どもたち全員に、明確なめあてを与えられるかどうかです。
私は、後方膝掛け回転をベースに、できない子どもには膝掛け振りを、出来る子どもには、前方膝掛け回転や量膝掛け回転、さらには、片膝掛けから両膝掛けへの回転をしながら変形させて最後は、着地といったアクロバティックな技の発展まで用意して授業に臨みました。
鉄棒が苦手な子どもから得意な子どもまで、全ての子どもたちが自分の能力に応じた技をめあてとすることが出来る教材群の提示です。
O君はとても鉄棒運動が得意な男子です。共通課題であった後方膝掛け回転はものの数分でできてしまいます。私がO君に指導したのは二つです。
ひとつは、できていない子どもへのアドバイスです。できている子どもができていない子どもへアドバイスや励ましを積極的にしてくれると、授業全体に血が通ってきます。個人運動種目の鉄棒運動ですが、こうすることによって、肯定的な雰囲気が漲り、集団達成的な空気が満ちてくるのです。
もうひとつは、大海原を航海する船に航路を示すべく、O君が次に挑戦する技や動きを具体的に指導するのです。この航路に終わりはありません。O君が次々に段階をクリアしてもO君の挑戦は終わりません。ここは、教材研究と経験から紡いだ実践がものを言います。決して、専門書を読んでいても構築できない分野だと思っています。
O君は、自分が達成した技のポイントを友達に実際の動きを通して、アドバイスしてくれます。友達は、O君の技を実際に見て、具体的なイメージを持って挑戦します。そうこうする内に、O君だけでなく数人の鉄棒名人が学級に現れます。こうするとしめたものです。教師は、運動の苦手な子どもにかかわる時間も確保できますし、学級全体にみんなでできるようになろうという大きな意欲が醸成されてくるのです。
薪に火をつけるには、燃えやすい新聞紙に火をつけます。これと全く同じ理屈です。鉄棒運動でも、得意な子どもには、停滞させることなく、絶えざるめあてを与え続けるのです。同時に、友達へのアドバイスと励ましの方法を指導すれば、学級全員がWIN・WINの関係になるのです。
☆めあてを達成できている子どもの学びを止めてはいけません。絶えることのないめあてを与え続けましょう。
絶えざる発展性を教師は準備します。本来、めあてとは、子どもたちの数だけ用意するものです。
それが、個別最適化の学習です。