体育授業ー31 チームゲームの作戦指導のコツ
◆サッカーやバスケットボールなどのボールゲームの授業では、作戦を指導する場面が教師の一番の腕の見せ所です。
しかし、子どもたちが前半戦を終え、作戦を車座になって考えている時に登場した教師から「どうして、勝てなかったのかよく考えてみよう。」「チームで勝てるように工夫してごらん。」といった他人事のような指導が散見されます。このままで、子どもたちは本当に勝利に結び付くような作戦が考えられるのでしょうか?
勝っているチームには、この指導は効果的だと思います。子どもたちが考えたことがゲームの中で生かされて勝利しているのですから、教師があれこれ指導するとかえって子どもたちの学習意欲を妨げることにもつながりかねません。
私が申し上げたいのは、どうしても勝てないチームにどのように勝利の喜びを味わわせるかということです。原因は幾つか考えられます。
まず、チーム編成から失敗している場合です。子どもたち一人ひとりの能力や相性の問題も含まれています。
次に、リーダーシップを発揮できる子どもがいない場合です。これも、チーム編成に由来している部分も考えられますが、教師がリーダーとして期待していた子どもが、思ったよりリーダー性を発揮できなかった時は、チームがまとまらずに迷走してしまいます。
そして、もうひとつは子どもたちが、何をしてよいか分からず、プレーに集団としてのつながりが持てない場合です。チームゲームは、集団技能を向上させる教材です。個人技能をいかに集団技能に結び付けるか、ここがポイントになります。
さて、教師の指導は、勝ちに恵まれないチームに「考えてごらん」だけでは不親切です。そもそも、教師自身が、目の前のチームをどのようにしたら勝てるのか、確固たる考えを持っていなければ行き当たりばったりの指導になってしまいます。
教師は、指導している全てのチームを観察し、記録をとって、単元の中でどのような成績となるのか十分に予測した上で、毎時間の指導内容を考えます。指導内容には、動き方、ポジショニング、チームワーク、失敗した時の声のかけ方に至るまで、教師が単元でねらう学習内容に照らし合わせながら、熟慮する必要があります。
そして、教師には、単元全体を通して、子どもたちに感動とチームワークの素晴らしさ、自ら作戦を考え、工夫して勝利する喜びを味わわせるようなゲームメイクが求められているのではないでしょうか。
感動は、生きるエネルギーになります。教え過ぎず、任せず過ぎず、教師も子どもも感動して涙を流すような「メイクドラマ」をぜひ、成就させてください。