体育授業ー30 (高学年)リズムを教えるハードル走
◆私が勤務していた学校では、市内陸上大会がありました。種目毎に勝ち点を設定してあり、学校単位で順位を競い合う大会です。
私が勤務していた小学校のブロックは7校で競いました。
体育主任にとっては、沽券にかかわる大会であり、4月から長期間で取り組む学校も珍しくありませんでした。
さて、大会競技の中に80mハードル走がありました。抜き足の指導が先か、振り上げ足の指導が先か、ライバル校の体育主任と大激論を交わしたこともあります。私は、「振り上げ足を素早く踏み下ろすことによって抜き足もスムーズに抜ける」ことを主張したものです。
しかし、その大激論から十数年経ってから分かったことがあります。ハードル走を指導する上で大切なことは、抜き足や振り上げ足という部分的な技能指導ではなく、全体のリズムであるということです。
今の子どもたちは、自分の体を巧みにコントロールすることが大変苦手です。歩く時にも体が曲がり、背筋を伸ばして座ることにも注意が必要なくらいです。ましてや、ハードルをまたぎ越しながら走るなどということは、サーカス級の難しさと言っても過言ではないでしょう。
学習指導要領にもその点を意識して「ハードルを素早く走り越し、ハードル間を3~5歩でリズミカルに速く走る」と明記してあります。大切なのはリズムだったのです。
リズムを作るには、ハードルの高さやインターバル(ハードル間の距離)を子どもの体型や走力によって合わせる必要があります。そして、その際にやや低め、やや短めにする必要があります。
リズムは動きそのものですから、その子がハードルという障害物を過度に意識しなくても走り越せる状態にしてあげるのです。
そして、リズムが身に付いてきたら、少しずつ高く、長くして挑戦課題を高めていけばよいのです。初めから「よっこらしょ」という課題ではハードル走はその特性に触れさせることはできません。
6年生のSさんは、この指導方法によってリズムを習得し、体育授業で40mに3台のハードルを軽々と走り越すことができるようになりました。リズムはスピードを上げ、スピードは距離を伸ばします。Sさんは、単元終了時には、高めのハードルを結構なインターバルにして、3歩のリズムで走り越すことができるようになりました。子どもたちは、40m走のタイムにハードル走でどこまで近づけるかを自分の目標としていました。Sさんは、あと2~3秒のところまで近づき、自己の課題を達成しました。
運動を指導する際に、まずは大まかな動きを身に付けさせてから手足等の部分を習得させること、これも有効な指導方法のひとつだと思います。
☆運動は動きからできています。動きは、絵画のようにまず全体のデッサンを描き、少しずつ細部を描いて完成に近づける習得方法もあります。色々な指導方法を研究しましょう!