体育授業-16(中学年)ルールを守ることの大切さを指導します
◆「基礎・基本を大切にしましょう」
よく耳にする言葉です。そして、ここで言う基礎・基本とは、体育授業の場合は、運動技能を指す場合が多いようです。中学年の子どもたちは、個人から集団へ目が向けられる時期です。運動技能も勿論ですが、社会性の基礎・基本についてもしっかりと身に付けさせる必要があります。
Iさんは、運動好きで学級で一、二を争う負けず嫌い。口も達者で、口論になれば、彼女に勝てる友達はいません。
ラインサッカーの授業の時のことです。冬の寒さも何のその、半袖と半ズボンで走り回る子どもたち。すると、涙を流しながら口論している姿があります。
よく話を聞いてみるとIさんは得点係だったのですが、自分のチームが得点していないのに、勝手に得点板を操作して加点していたというのです。どうやら、ついうっかりやってしまったことではないようです。Iさんが、意図的にやっていたことは間違いないようでした。
私は、しばらく考えてから「何かの間違いでしょう。Iさんがそんなことするはずないと思います」とその場を納めました。
第2ゲームに入ります。私は、遠くからIさんの得点係の様子を観察していました。するとどうでしょう。絶妙のタイミングで得点板の得点をゴールと関係なく、めくっているではないですか。それも、一度だけでなく、何度も繰り返しています。
ここで、私は、Iさんを係活動から外し、理由を尋ねました。しかし、理由はありません。負けたくない一心から得点板を操作していたのです。Iさんの自分のチームを勝たせたいという気持ちは尊いものです。しかし、ゲームはルールに基づいて運営され、勝敗の結果を受け入れ、勝っても負けても、正しい態度をとれるようにすることが学習の課題となります。
私は、Iさんにできるだけ分かりやすい言葉でフェアープレーの精神について指導しました。Iさんは、神妙に私の指導を聞いていました。
Iさんは、体育授業以外の色々な場面で、これと同様のトラブルを起こしていました。その度に、根気強く指導しては、約束の握手を繰り返しました。
森信三先生の言葉を思い出します。
「教育とは流水に文字を書くような儚い業である。だがそれを、厳壁に刻むような真剣さで取り組まなくてはならない」
何度も約束を裏切られましたが、その度にこの言葉を思い出し、根気強く指導を重ねました。
私はIさんを3年生、4年生と担任しましたが、4年生の3学期頃でしょうか、ルールを守って生活しなければならないことを自覚した行動が見られるようになりました。
話しを体育授業に戻しましょう。
ゲームの授業では、「ルールを守る」という社会性を磨く絶好の教材となります。ルールを守れなかった子どもたちにルールの大切さを理解させ、仲間とともに全力を尽くす。そして、勝っても負けても、正しい態度がとれるように学習できるまたとない機会となるのです。
☆ルールを守ることは社会性の基礎・基本です。一度指導して身に付くようなものではありません。長いスパンで、繰り返し指導して、少しずつ身に付けさせていきましょう。焦りは禁物です。長い目で。