体育授業ー34 導入の大切さ
◆スピーチでは、最初の30秒間で聴衆の心を掴めばかなりの確率ですると言われています。体育授業も同様です。
小学校の高学年以上になると、教師が授業に少々遅れて来ようが、興味が減退するような説明をしようが、我慢して聞いてくれます。しかし、小学校の低学年になるととても素直な反応を示すのです。
これは、私が小学校1年生、2年生の跳び箱遊びの授業を研究した時に肌で感じたことです。まず、子どもたちは体育授業の場に集合すると体を動かしたくてうずうずしています。それなのに、形式的な説明をダラダラしていると体育授業への意欲が目に見えて低下して来ます。地面に絵や文字を書き始める子どもたち。その行為を叱り、長々とお説教をする教師、子どもたちが期待していた運動は、益々遠のいて行きます。
こうなると子どもたちにとって授業ではなく、修行になってしまいます。
そこで、私は子どもたちが運動場や体育館に現れると、軽快な曲をあらかじめ流しておき私も一緒に走りました。まだ始業のチャイムは鳴っていません。冬場は、走るだけでなく、鬼遊びをしたり、ダンスをしたり、とにかく始業までに心拍数を上げておくのです。
そして、チャイムと同時に準備運動を行います。ここで徒手体操やストレッチングではなく、曲に合わせた運動セットを行うと効果的です。準備運動の後半になると子どもたちの心拍数はかなり上がっているので、呼吸を整えながら簡単な徒手体操やストレッチングに入ります。この時点で、子どもたちは「体育授業=運動」という期待をほぼ満足させていますので、教師の説明もすんなりと聞いてくれます。
しかし、その説明も3分間以内、できれば2分間以内が効果的です。それ以上説明しても子どもたちは聞いていないのですから、教師が説明したいという自己欲求を満足させているに過ぎません。この一事を理解するだけでも、指導技術は各段に向上します。
説明の後は、いよいよ主運動に入ります。子どもたちが、意味のある動きを繰り返し行えるような教材を子どもたちに提供できれば、密度の濃い体育授業が展開されます。
このような導入の工夫は、低学年だけではありません。高学年以上になっても基本は同じです。授業は、時間が決まっている定時制です。その大半を子どもたちにとって意味のある学習時間とするためには、効果的な導入は欠かせません。
チャイムが鳴るまで、体育座り、チャイムが鳴ったら、体操体形に開き、徒手体操、体操後は集合して長々と今日の課題について説明を聞く。
心も体も寒くなる導入に陥らないようにしましょう。