学校教育ー89 個を磨く
◆日本は農耕民族であり、ムラ社会が基本にあります。農耕を行うには、チームワークが欠かせません。狩猟民族でも時には、チームワークを要する場面もあるのでしょうが、基本は、個の能力ではないでしょうか。ここに、日本と欧米社会の基本的な差異を感じています。
さて、学校教育でも「和」を重要な徳目として扱い、子どもたちを指導しています。最近は、多様な他者に対する理解を深め、様々な人たちと協働できる姿を求める風潮が強くなりました。
これは、学校の教職員にも同じことが言えます。学校としての考えや学年としての考えを教師個人の考えに優先させるのです。これは、組織で動くのですから当然と言えるでしょう。
野球やサッカーなどのスポーツで、チームを無視してワンマンプレーすることは許されるものではありません。しかし、個人のもつスキルや思考パターンを磨き、チームにアジャストさせる努力は必要です。
1学年に2学級しかない学校で勤務したことがあります。1年生から6年生まで全12学級の学校でした。
若く、経験の乏しかった私は、ベテランの学年主任さんにいつも気兼ねしていました。自分ではこうしたいと考えていても、それを実行に移せなかったのです。勇気が無かったのです。このように、チームのメンバー、特に自分よりキャリアを積んでいる人の考えを重視するチームワークと、自分の論を通そうとする個の願いは、必ずしも一致するものではありません。時として、摩擦が生じてしまうこともあります。
しかし、自分で考え、行動する、個の確立は生きていく上でとても重要なことだと思います。個があるからこそ、相手とディスカッションもできるし、互いの良さや考えを生かすこともできるのです。
ただし、注意することがあります。個の確立を独善的な価値観と混同しないことです。個とは、社会に貢献できる内容、能力であることが必須です。
子どもたちへ教育する際に、集団だけでなく、一人ひとりの良さを見出し、磨き上げ、正しい「個の確立」に結びつくような視点を重視する必要があると考えます。
その際に、「勇気」の必要性も添えて学ばせることも忘れずに。