体育授業ー28 (高学年)全力走がなくなった?
◆昭和の体育授業では、50m走は人気種目でした。放課後も、「かけっこ」と称して友達と競争して遊ぶ姿が見られました。
私はかつて、子どもたちの走力を向上させるために、リレーを中心とした授業と短距離走を中心とした授業を比較検証してみました。どちらの授業とも結果として50m走の記録は向上しましたが、短距離走を中心とした授業の方が、向上の伸びが大きかったのです。
この結果から改めて分かったことは、「子どもたちには全力走の経験が乏しい」ということです。
5年生のR君は、走る時に手の振りも体も斜めに傾きます。よく観察すると、普段歩いている時もどこかぎこちなさが見られました。
授業の中でR君には、もも上げ走や、ストライド走を通して、腕の振り方や足の上げ方等を一連の動きの中で指導しました。準備運動では、片足ケンケンやスキップも取り入れました。
そして、一回の授業の中で、10本以上の全力走に挑戦させたのです。
R君は、最初の内はすぐに息が上がってしまいました。その様子を見て、私は、R君が全力で走る経験を日常の遊びの中でほとんど経験していなかったことに気付いたのです。これは、R君だけではありません。同じようにへこたれてしまう子どもが数人いたのです。
さて、授業が進むに連れ、R君とこの子どもたちはどのような変容をしたか?
人間の体は正しい動きを身に付けるとその能力をいかんなく発揮してくれるものです。
R君は、腕の振りがしっかりして、走る時の爪先のキックも力強いものになりました。記録も飛躍的に向上し、「自分でもやれば走れる!」という自信を持ってくれました。
今の体育授業は、子どもたちが夢中になって運動する中で、自然と体力や運動能力が向上できるような教材づくりに主眼が置かれています。
しかし、人間の体が持っている能力をフル回転させるためには、出力を最高にする場面をもっと意図的に増やしてもよいのではないでしょうか。
柔らかいものばかり食べていては、あごの力は弱くなります。
簡単な問題ばかり解いていては、発展問題は解けるようになりません。
子どもたちには、どこかで「全力を振り絞る」経験をさせてあげることが大切なのではないでしょうか。
そういう意味からも体育授業での50mの全力走は、持てる力を出し尽くす経験をさせる素敵な挑戦タイムになると思います。
☆子どもたちが全力を出して挑戦できる機会を意図的計画的に作ってあげることが、子どもたちの能力を開発する上でとても大きく役立ちます!