生涯学習-6 子どもの未来を拓く社会教育
◆教師にとって、教え子の活躍は何よりの報酬です。先日、ふとしたことから、何十年も前の教え子が大活躍をしていることを知り、その子の辿った道を振り返ると学校教育以外の教育がその子の人生を拓いていたことに気付かされました。
子どもの未来を拓く教育について気付いたことを書かせていただきます。
私がこの頁を書くきっかけとなったのは二人の教え子の存在です。
一人は、小学校1年生、2年生の時、担任した子どもです。
突然お手紙を戴いたF君は、既に23歳になっていました。
F君は、「『努力できることが才能である!』」という先生の教えが、今になって理解出来たような気がします。ついては、ぜひ、お会いしたいです」と丁寧に自分の気持ちを手紙に書き込んでくれました。
感動した私は、すぐに返事を書き、後日手紙に書かれていた彼の携帯電話に連絡しました。電話に出たF君は、私の覚えているF君の声ではなく、話し方も話す内容も大変しっかりしていました。
そこで、休日に家庭訪問させていただく約束をし、胸躍らせながら、彼の家へ。
F君やご家族との再会は、時を一気に戻し、感動しながら昔話に花を咲かせました。
そして、F君が1年生の頃からの夢であった飛行機の設計技師になりたいという夢に向かって、現在JAXAと共同研究をしているのを知り、嬉しさと驚きで胸が一杯になりました。
さらに、合唱部でリーダーとなり、日本武道館で入学式の校歌指導をした映像まで見せていただいた時には、目頭が熱くなりました。
さて、F君は私立中学校・高等学校で文武両道の教育を受け、心身ともに逞しく成長していました。
そして、大学では、機械工学を学び、現在は大学院でJAXAと共同研究をしているのです。
こうしてみると、F君の人生を拓くのに確かに学校教育は何らかの影響を与えているでしょう。しかし、幼い頃、飛行機の設計技師目指して、自由帳に飛行機の絵を描いたり、折り紙で飛行機の模型を作ったりしていたこと、あれは、学校教育とは関係が薄いものです。
F君の趣味、夢と表現した方がいいでしょうか、そういう部分です。
社会教育の定義を紐解いてみると、家庭教育、学校教育、社会教育、企業内教育、スポーツ活動、ボランティア活動、趣味等が浮かび上がってきます。
子どもにとって趣味も大切な教育なのです。教師である私には、「教育」=「学校教育」という強い思い込みがありました。
しかし、F君の成長を目の当たりにして、子どもは社会教育の中で、水を吸い、日を浴び、養分を吸収して自分の夢に向かって成長していることを理解したのです。
思えば、学校教育は、幼稚園を含めて大学院まで数えても22年間程度です。生まれてから幼稚園に上がるまでを家庭教育としても、人生100年時代の残り76年間は、学校教育以外の社会教育に自分の成長を委ねることになるのです。
スポーツ活動も然りです。学校教育では、体育授業や部活動があります。しかし、プロのアスリートになるには、スポーツの専門的な技術を磨く教育が有効です。
私のもう一人の教え子は、サッカー少年団からプロサッカーチームのジュニアチームに入団し、19歳からトップチームに昇格、プロデビューを果たしました。
O君は、学校教育の場でも勉強、運動、友達関係、全てにおいて目覚ましい成長を見せていました。
しかし、学校教育以外のプロチームの教育を受けていなかったら、デビュー早々、フル出場、デビュー間もなく初ゴールを決めることは、できなかったのではないでしょうか。
O君もまた、学校教育以外の社会教育により自分の人生を切り拓いていたのです。
教師は学校教育のプロです。
しかし、子どもの未来を拓くためには、学校教育を含む社会教育全てが影響を及ぼすことを俯瞰して冷静に見つめることも必要です。
それは、丁度、医師が患者の病気を治すのに、患部の治療だけでなく、栄養や生活習慣についても助言するのと似ているのかも知れません。