小1は真っ白なキャンパス 「教育は愛」No.8

学校教育

学校教育ー3 小学校1年生は真っ白なキャンパスです

◆学校教育のスタート地点である小学校1年生。これから十数年学ぶ学校へのファーストインパクトとなる大事な学年です。私は、小学校1年生という時期の重要性を深く認識し研究すれば、学校教育の指導方法はもっと的を射たものになるのではないか、と実際に1年生を担任させていただいた時にしみじみと思いました。

 私は、小学校に勤務するようになってからは、専ら高学年の担任でした。

 当時は、若い男性教師や体育を担当する教師は、高学年を担任することが多かったのです。小学校に着任してすぐに私は体育主任を命じられ、5年生を担任し、6年生に持ち上がり、卒業させてからまた5年生、6年生の担任を繰り返しました。

 やがて私は、体育科教育を継続的に研究している学校へ異動しました。

 この学校は、埼玉県内でも屈指の体育科教育研究校で、毎年公開授業研究会を自主的に開いていました。授業前の朝の運動を全校で行い、1年中、体育の研究授業を全ての教員が繰り返している学校でした。

 昭和40年代から昭和の終わりまで、この学校のように体育科教育に力を入れて研究している有名校が全国に相当数ありました。そのひとつの学校が私の異動した小学校だったのです。 

 この学校では、公開授業研究会が近づくと1時間目から4時間目まで体育授業を行う学級もありました。朝から晩まで体育漬けの日々でした。

 この学校で体育主任を任せられた時です。低学年を担当する先生方から、「高学年と違って低学年は、座ることも並ぶことも難しいのだから、千葉先生の言うような体育の授業は簡単にできない」という批判的なご意見をいただきました。

 私は、手順を踏んで指導すれば、多様な学習経験を有する高学年の子どもたちよりも学習経験が少ない低学年の方が効率よく体育授業が進むはず、と信じていました。

 そこで、何度か、低学年の学級を拝借して体育授業を実際にやらせていただきました。

 案の定、私の思っていた通り、低学年の子どもたちは、きびきびと運動し、学習に集中してくれました。もし、この子たちの担任だったら、一人ひとりの性格や長所を生かしながらもっと効率よく授業を進められたはず、という確信を持ちました。

 その後、1年間、現場から離れて研修させていただく機会をいただき筑波大学の髙橋健夫教授のもとで低学年の体育授業を1年間、研究に没入する機会に恵まれました。

 研修を終え、他市の学校へ異動して数年後、遂に念願の1年生を担任する機会を得たのです。この時は、久しぶりに興奮したものです。長年の願いであった低学年の担任です。

 今まで自分が研究してきたことが、毎日実践の中で検証できるのです。低学年の子どもたちはどのような授業や教師の姿を望んでいるのだろうか? 

 私はワクワクしながら子どもたちの入学式を迎えました。その後、授業が始まり、子どもたちとの生活を送るに連れ、教師になってこれほど衝撃を受けたことはないくらい感動しました。まるで真っ白なキャンパスに自分の思い通りに絵を描いているような感覚です。

 子どもたちは、学校という新しい世界で教師が何を話すのか、目をキラキラと輝かせて全身で聞いてくれます。一言誉めると10倍、20倍の反応を返してくれます。

 その結果、学力も運動能力もグングン向上していきます。この勢いでいけば、全員が東大に合格してしまうのでは? と思ったほどの伸びでした。

 算数や国語の授業の後は、「勉強が楽しい!」「宿題沢山出して!」と笑顔を見せてくれ、体育授業の後は「体育楽しい!またやろう!」と、まるで遊びから帰るような感覚で、私の両手を奪い合うように手をつなぎ、教室まで帰ります。

 教えることの喜びに満たされ、教師という職業に限りなくやり甲斐を覚えた日々でした。

 1年生の子どもたちから学んだことは、誉めること、笑顔で接すること、無理せず、少しずつ丁寧に、根気強く説明すること。躓いているときは、一緒に原因を考えてあげること。そして、休み時間は、子どもたちの視線に立って、一緒に遊び、話し、子どもたちの考えていることを常に受け止めてあげることでしょうか。

 1年生の子ども達を観察するし、子どもたちが何を考えているか理解するためには、新任の頃、特別支援学校で学んだ数多くの教訓が生かされました。

 教師は、子どもたちから学び、日々、成長していることを改めて実感し、感謝したものです。

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