水に入ってこそ水泳 「教育は愛」No.146

体育授業

体育授業ー26 (高学年)水に入ってこそ水泳

◆小学校の水泳授業では、学年単位で学習する場合と学級単位で学習する場合の2種類のパターンがあります。

 私がお世話になった小学校は、全て学年単位で学習しました。2学級の場合は80名程度、4学級の場合には150名を超える人数でした。

 なぜ、学年単位で学習するのか?

 それは、安全面の配慮と子どもたち泳力に合わせた課題別の学習を効率よく行うためです。安全面の配慮では、指導する教師に心肺蘇生法係、連絡係、児童把握係をあらかじめ決めて万が一の場合に備えています。

 さて、学年で学習することになると前の授業の後始末等で、授業開始時刻に間に合わない学級が出て来ます。授業時間は、45分間と決まっていますから、開始時刻が延びてしまうと子どもたちが、水に入って学習する時間が削られてしまいます。

 私は、水泳学習の成果は、水の中に入っている時間の長さに比例すると考えています。プールサイドで、どんなに教師が熱弁を奮っても、水の中で実際に体を動かしながら指導した方が効果的です。

 水泳は、自転車の乗り方を覚えるのと似ています。これは、小脳で感覚を覚えるところが共通しているからだそうです。

 つまり、前頭葉で理解しても、体を動かしながら小脳で覚えていかなくてはできるようにならない、という特性が水泳にはあるのです。この仕組みは、自転車だけでなく、一輪車や竹馬にも共通することです。

 私自身も水泳が苦手だったことから、成人してからスイミング教室に通ったことがあります。スイミングの先生は、一緒に水の中に入って、手足の動かし方を指導してくれます。

 時々、絶妙なタイミングで腕を補助してくれました。決して、プールサイドで長々と指導するようなことはしませんでした。

 準備運動、整理運動を除けば、開始時刻から終了時刻まで、ほとんどの時間は水に入り放しです。

 6年生のPさんは、クロールで何とか10mを泳げる段階でした。Pさんの今年のめあては、25mを泳ぎ切ることです。私が見たところ、Pさんは水の中で極度に体を固くしてしまうため、手足の動かし方がぎこちなくなってしまっていたのです。

 私は、Pさんの水中での緊張をほぐしてあげることに的を絞りました。まずは、壁を蹴ってからの「けのび」です。「けのび」では、体に余計な力が入っていると思うように進みません。私も、スイミングスクールで、繰り返し指導を受けました。私は、根気強くPさんに「けのび」の指導を繰り返しました。クロールの泳法よりも「けのび」です。やがて、力の抜けたきれいな「けのび」ができるようになったPさんは、いとも簡単に25mを泳ぎきることができました。

 学校の教師は、水泳の授業でやたらと英違法の指導をしたがります。スイミングの先生は、「けのび」とバタ足を繰り返し指導します。結果は、スイミングで習った方が、早く泳げるようになります。

 スイミングスクールの先生は、水泳は水の中に入って指導すること、全ての泳法の基本は「けのび」にあること。それを繰り返し行わせることにより、全ての泳法の基礎となる姿勢や力の抜き方・入れ方を体で習得させているのです。

 学校は、限られた授業時間の中で、運動の特性に触れさせ、基本は何かをよく見極めた上で授業を進める必要があるでしょう。

☆運動には、特性があります。水泳は水の中で学習して初めて特性に触れることができるのです。言葉で説明するだけではなく、特性に触れさせながら理解させることが子どもたちをできるようにする体育授業につながるのです。

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