芸は人なり、教育も人なり 「教育は愛」No.195

教師

教師ー20 芸は人なり、教育も人なり

令和5年度の初めに、林家たい平師匠のご公演を拝聴する機会に恵まれました。埼玉県の小学校の校長を対象にした講演会会でした。たい平師匠のお話の中で柳家小さん師匠からいただいたご指導の件が、私の胸に深く残りました。

 たい平師匠のお話によると、噺家さんは、自分の師匠から芸を教わらないそうです。教えてしまうと師匠のミニチュア版ができてしまうと言うのです。

 ですから、師事している師匠からは、人としての生き方を学ぶ。芸は他の師匠から学ぶという興味深いお話しでした。

 教員の世界でも、卓越した指導力を持つ先生が、若い先生方に、自分の指導方法を伝授することに終始すると、若い先生のオリジナリティーが薄くなってしまうこともあるかも知れません。それでも、まねているうちに、やがて自分の指導方法が確立していくものですが。

さて、たい平師匠が尊敬する柳家小さん師匠からいただいたご指導とは、「芸は人なり。テクニックを磨こうとせず、人間を磨け」というものだったそうです。

 人間性を磨いていけば、それは自然と芸にも表れる。そして、その人にしか出せない味が滲み出てくる。お客さんは、人間性溢れる噺家が大好きで、落語を聞きに来るのではなく、その噺家に会いに来る。噺家と同じ空間にいて、同じ時間を共有したいから、寄席まで足を運ぶ、とういう内容だったそうです。

 私は、このお話しをお聞きした時、全身に稲妻が走ったような感覚を覚えました。

 教師も同じではないでしょうか。その教師の指導力も大切ですが、子どもたちは、その教師の人間性に惹かれて、学校へ登校することが多々あるのではないかと考えます。

 子どもたちや保護者を惹き付ける引力のある教師は、人間性も奥深く、あたたかい。愛に溢れているのです。

 一緒に仕事をしている一人の教師は、学期末にある子どもの成長ぶりが嬉しくて、通知表だけでなく、保護者へ丁寧に電話していました。保護者の方と子どもの成長を喜び合っているのです。

 私が、その教師の対応を称賛し、校長として感謝の言葉を述べると「ぜひ、自分の言葉でお伝えしたかったのです。それだけ、○○さんの成長は私にとって嬉しいものでしたから」と爽やかな笑顔で返してくれました。

 子どもや保護者だけではなく、私もこの教師の人間性に惹き付けられてしまいます。

 芸は人なり、教育も人なり・・・・そして、「教育は愛」です。 

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