家庭教育ー2 父性と母性が家庭教育には必要
◆家庭には、父母がいます。父母は子どもに与える影響も異なるはずです。父母が、各々の役割を分担して家庭教育が成り立っているのです。しかし、近年、次第にその役割分担が希薄になっている感じがします。家庭教育を充実させるためには、父母の役割分担は欠かせないはずです。
私が教員になった頃から10年間くらいは、母親が子どものことで感情的に学校へ抗議してきたのを後から父親が宥めて、学校へ行き過ぎた抗議を謝罪するという図が当たり前でした。しかし、今は母親よりも父親の方が激高し、抗議してくることが珍しくありません。
管理職時代、両親との面談や教育相談を何度も行いましたが、年々父親の発言権が小さくなってきた印象を持ちました。
「お父さんはどのようにお考えですか?」と発言を求めても口ごもってしまったり、何かモゴモゴと話し始めると激しく母親に制止されたりする場面が目立ちました。
母親は、子どもに関する教育の一切の権利を有しているかの如く、話を進めようとします。勿論、そうでなく父母ともに謙虚に耳を傾けたり、真剣に意見を出し合ったりするご両親もいらっしゃいましたが。
子どもの様子と保護者の様子を重ねてみると、ご両親の息が合っている方のお子さんは、課題があってもそれを確実に解決していきます。
一方、ご両親のうち一方の力が大きすぎてバランスが崩れているお子さんの方は、気持ちが不安定で、色々な場面でトラブルを起こしがちです。
教師の立場から見ると子どもを見れば、親の様子も分かり、親を見れば子どもの様子も大体分かります。
それでは、父母の理想的な役割とはどのようなものでしょうか?
母親は、子どもの絶対的な守護者です。これは、自分のお腹を痛めて子どもを誕生させたことと無関係ではないでしょう。子どもがどんな立場になろうと、無条件で守ろうとします。母性には、理性よりも感情が優先します。ですから、わが子がいじめられると完全に心をシンクロさせ、猛然と怒りをぶつけてきます。
一方父親は、理性を働かせて物事の道理や人生における価値観というものを自己の社会的立場を参考にしながら子どもに教えることができます。
こうして考えると、生きる上での本質的なこと、愛情の受け方・与え方、食事や着替え、言語に関すること、基本的な生活等、人としての基盤部分は母親が役割を担うと効率的だと思います。
そして、父親は子どもたちの社会性やコミュニケーション、社会で生きていく上でのふさわしさや価値観等について、自分の働く姿を通して教えていくことが自然なのではないでしょうか。
近年、女性の社会進出も昭和の頃とは比べようもないくらい進んでいます。そのため、今まで父親が担っていた父性の部分を母親が担っているケースも増えていると思います。
子どもの立場から見れば、父母には、父性と母性を互いに発揮させながら家庭教育を進めてもらうことが求められているのではないでしょうか。
令和の時代、ジェンダーフリーとなり、LGBTQが社会的に認められるようになりました。人が生きていく上での多様性が求められるようになったのです。
ですから、今までのような父母の役割分担についても形を変えざるを得ない状況にもなっています。だからといって、子どもの健やかな成長には、母性から与えられる愛情をはじめとする人の本質部分の教育、父性から与えられる社会性やルール、価値観をはぐくむ教育は不可欠のものです。
これらのことは、学校で学ぶ前に、ぜひ家庭で学んでおきたいことですし、何歳になっても家庭で学び続けなくてはならないことです。
ご家庭の事情もあるでしょう。
父母の間でどのような役割分担をするかは、第三者が口を挟むことではありません。
しかし、父母でしっかりと話し合い、父性と母性を発揮した上で、子どもに必要な家庭教育を実践することは大切なことです。
「三つ子の魂百まで」教育の原点は家庭教育です。
そして、子どもたちにとって、父性と母性の両方が必要です。