管理職ー1 教頭の役割とは
◆教頭は、職員室の担任と言われ、職名の通り教職員の頭(リーダー)です。しかし、教頭の上には校長がいます。教職員をリードし、校長の考えを具体的に実現していくのが教頭に求められている仕事です。決して、自分の考えを前面に出してはならない無の境地が必要なポジションと言えるのではないでしょうか。
教頭職になった時、自分の名前は「教頭先生」になります。それまで「〇〇先生」と呼ばれていたのに「教頭先生」と呼ばれてしまいます。
また、職員室では教職員全員を見渡せるような位置に机がセットされます。いわゆる職員室の上座には、校長、教頭、教務主任の3人が座る場合が多いようです。この位置から職員室を見ると、景色が今までと全く違います。教職員全員の様子が見渡せる位置、教室で言えば教壇に立って子どもたちを見る位置と同じです。
職員会議も、休み時間でも、ここから見ていると先生方が何をしているのかが、よくわかります。特に休み時間や放課後は、今まで気付かなかったような教職員一人ひとりの様子が手に取るようにわかるものです。
いつも明るく会話の中心にいる職員もいれば、一人で黙々と仕事する職員もいます。
毎朝、早く出勤して、夜遅くまでいる職員、ギリギリに出勤して、チャイムとともに消えていく職員、実に様々です。こうしたことは、担任時代には全く気付かないことでした。
また、勤務時間が終了した後、校内を巡視して戸締りをするのですが、全ての教室を回るため、教室で仕事をしている教員と1対1で話す機会も多くなります。
互いに理解し合い、本音で話せるようになると、子どもたちのことや教育内容のことだけでなく、家庭のことにも話題は及びます。親の介護のことや、我が子の子育てのこと、結婚やマイホームのことまで相談してくれる職員もいました。このことも、担任時代、放課後に子どもたちから相談された時の様子に似ています。
こうして、教職員一人ひとりに寄り添い、考えや抱えている事情等が理解できるようになると、仕事の面でも分担内容や勤務時間等について具体的なサポートができるようになります。
私は、教頭の仕事を進めていくうちに「教頭は職員室の担任である」と言われている意味が理解できるようになりました。
その中で、自分が肝に銘じたことがあります。
それは、学校のトップリーダーは校長だということです。時々、教頭の方が職員から信頼され、校長が疎んじられてしまうようなケースがあると聞きます。
そんな時、いい気になって教頭がトップリーダーのように振舞ってしまうと組織は崩壊してしまいます。教頭はあくまで二番手であり、サブリーダーなのです。
運動会や卒業式での教頭の出番は決まっています。開式の言葉と閉式の言葉です。「ただいまより令和〇年度 〇〇市立〇〇小学校の卒業式を開式いたします」その後は、校長が主となり式が運営されていきます。
学校行事の途中で教頭が自分の意見を述べる場面など全くないのです。この役割が、教頭の立場を象徴しています。
そして、教職員の先頭に立ち、行動力をフル回転させることも教頭の大事な役割だと考えます。
担任に保護者からの苦情が寄せられた時、担任や学年主任任せにしないで、教頭が先頭に立って、事態の収束に奮迅します。
学校行事の準備を担当主任と連絡を取り合い、率先して準備したり、職員作業でペンキ塗りをする時、用具の準備をして最初に塗り始めたりするのも教頭の大事な仕事です。
また、PTAや地域の集まり等で挨拶を求められても、校長より長く話をしてはいけません。時々、校長より長々と得意気に話して悦に入る教頭を見かけますが、あまり感心できません。校長へのフォロアーシップが欠如しているからです。
教頭時代に校長の言動や教職員の本音を学べることはとても大きなプラスです。
無私の立場になって、「もし自分が校長だったらどうするか」と冷静に考え、管理職としての資質に磨きをかけられるのが教頭職です。
一辺に二階へ上がることはできません。まず、玄関に入ります。
教頭職は、校長という二階へ上がるために通らなくてはならない玄関ではないでしょうか。
私は、そのような意識を教頭時代に培い、校長へのフォロアーシップと教職員へのリーダーシップの向上に努めたつもりです。
特に、フォロアーシップは、その後、校長になってからのリーダーシップに大きく反映されていたと実感しています。