管理職ー18 生き方
◆既に鬼籍に入られている大先輩。その方の周りにはいつでも人がいっぱい集い、みな、笑顔で談笑していました。そして、授業や教育のことだけでなく、人としての生き方を諭してくださいました。この大先輩のような管理職は少なくなっている気がしてなりません。勿論、私も例外ではなく、この大先輩には遠く及びません。
泊を伴う研修会が、昔はしばしばありました。早朝、散歩しようと研修棟を出ると、大先輩が、車の埃を羽ぼうきで拭いていらっしゃいました。
「1回目の車検になりますか?」「いや、2回目だよ」
「私は、役職が変ったり、職場が変った途端に車を替えたり、鞄を替えたりするのは好きじゃないんだよね。だから、○○の役職になった時も、替えなかったろう。今回もそうだよ。よくいるんだよね、役職が変った途端に車を替える人が。私は、そうあるべきじゃないと考えていますよ」
私が、感心していると、ふと足を止めて「これはね、私個人の考えで、いいことかどうか、分からないよ。ただ、私の生き方はそうだ、ということでね」と言って大きく微笑まれました。
思い起こせば、この大先輩からは、人としての生き方について、沢山のことをご指導いただいたように思います。
宴会で立つ時に、座布団を踏まないこと、役職で人を区別しないこと、地域のお年寄りを大切にすること、先輩のことを敬うこと、自分の後輩に対しても、敬意をもって接すること等々・・・。
そして、大先輩は、自分と関わる人たちの住まい、職場、家族、友人関係など、数多くのことをしっかりと覚えていらっしゃいました。
この大先輩のような方が、昭和から平成の時代には、各地域に数人はいらっしゃたのではないでしょうか。
令和の時代、同じ職場で勤めていても、連絡先さえ交換していない職員も少なくありません。仕事上の付き合いだから、相手のプライベートに立ち入らない代わりに、自分のプライベートにも立ち入ってもらいたくない、そんな空気が職場の中に流れているのを感じます。
こうした中で、人としての生き方を語ることができるのは、管理職だけです。それなのに、管理職は当たり障りのないような言い方に終始する傾向にあるのではないでしょうか。
最近、明らかに職場の人間力は低下しています。その原因はこんなところにもあるような気がしてなりません。