生涯学習ー73 懐かしい声
◆私が体育主任をしていた頃、親身になってご指導してくださった先生からお電話をいただきました。私が現在の学校で校長をしていることを知り、声を聞きたいからという理由でお電話してくださいました。懐かしく、嬉しく、あたたかさで胸が一杯になりました。
その先生には、学校の体育科教育研修の指導者としても何度もご指導いただきました。
今でも覚えているのは、運動場で予定されていたサッカーの研究授業です。当日は雨天となり、体育館でサッカーの授業を行うことになりました。学習指導案は、大幅に変更し、子どもたちも私も戸惑いながら研究授業を行いました。
この時も、先生は、私が授業でやろうとしていたことを汲んでくださり、明快なご指導をしてくださいました。私の体育主任としての立場を理解していただきながら、全教員の前でご指導してくださったのです。
また、県単位の体育研究会でも指導者をされていた先生です。私もこの研究会に参加して数多くのことを学ばせていただいていました。この先生は、常に子どもを主体に考えていらっしゃり、私にも研究会のいろいろな指導者の先生がご指導してくださっているが、最終的には子どもを見て、自分で判断した方がよい、とアドバイスしてくださいました。
当時の体育の世界は、俗に言われる“体育会系”で、上の言うことが絶対でした。その中でもこの先生は、自分の考えを大切にすることをアドバイスしてくださったのです。
また、どんな時でも冷静に考え、判断され、他人と争うことも決してしませんでした。その柔らかく、奥の深い懐、寛容性に人としての生き方を学ばせていただいていました。
その先生が十何年ぶりにお電話をしてくださったのです。
優しく、紳士的な言葉、語り口から当時のあたたかいお心遣いを思い出し、胸がいっぱいになりました。人生の中で得がたい“先生”です。
先生は、今でも体育科教育に情熱を燃やしている先生方と定期的に集まっては、勉強会を開かれているそうです。コツコツと、若手の先生方を育成し、体育科教育の情熱の灯を繋いでいらっしゃるお姿に心からの敬意を表します。
そして、私のすべきこと、やりたいことを心の中で再確認し、人生の第4コーナーを走り抜ける決意を固めることができました。

