家庭教育ー7 幼い頃の親からの一言がトラウマになる
◆三つ子の魂百まで
3歳までに受けた教育は、その子どもの人格形成に大きく影響を及ぼすと言われています。
私にも忘れられない父の一言があります。大人になって、教育に携わるようになってから冷静に考えてみると自分の中で、その一言が大きなトラウマになっていたのを実感しています。
どのご家庭でも、3歳までの家庭教育は、愛の溢れるものであってほしいと、心から願う次第です。
3歳に東京から埼玉県に転居して間もない頃でした。父母の仲は日ごとに悪くなり、遂に父は家を出ていくことになったのです。その時は、まさかこのまま父が戻らなくなるとは思ってもいませんでした。
その日、朝から母と父は激しく口論していました。
やがて、荷物を手にして黙って玄関を出ようとする父。
母は、「ひろしも連れて行きな」と父を怒鳴りつけ私の背中を押します。
仕方なく父の後をトボトボとついて行く私。家から数百メートル離れた周囲がうっそうとした木々で囲まれたところに来ると父は振り返り、迷惑そうに私の顔を見ます。
そして、一言、「もうお母さんのところへ帰りな。ついてくるんじゃないよ」とやや怒った感じで言い放つと踵を返して、歩き始め、一度も私を振り返ることはありませんでした。
私の心境は複雑でした。
母からは父の後をついて行けと言われるし、父からはついて来るなと言われてしまったのです。
3歳半くらいだった私は、頭の中が真っ白になり、なす術もなく、茫然とその場で立ちすくんでいました。
この時以来、自分は誰からも必要とされていないのではないか、という疑問が心にこびりついてしまったのです。今で言うところのトラウマです。
幼稚園時代は、帰らなくなった父、貧乏のどん底に落ちていた家庭環境の影響もあり、内向的で人を信じることができない子どもでした。
幼稚園では、先生の話も聞かず、意地悪で問題行動ばかりを起こしている園児でした。
父がいない引け目は、小学校時代も続き、愛情に飢えているのですが、素直になれない、常に先生に叱られている問題児でした。
得意なものは絵を描くことくらいであとは、劣等感の塊のような子どもでした。
この劣等感は、中学校2年生まで続くことになります。
子どもがまだ小さいからと言って、大人の都合で心ない言葉を掛けてしまうと、真っ直ぐな子どもの心に抜きたくても抜けないようなトゲが刺さってしまいます。いや、トゲというより槍が刺さったような状態ではないでしょうか。
ですから、子どもの前で使う言葉、子どもへ掛ける言葉は、愛情の溢れるあたたかい言葉にしたいものだと心から願うばかりです。