心に刺さる大人の言葉 「教育は愛」No.36

家庭教育

家庭教育ー8 子どもの心に刺さる大人の言葉

◆時として大人の一言が、子どもの胸に深く刺さることがあります。

 私が少年時代に暮らしていた町は、とても小さな町で、噂もすぐに近所に伝わってしまいます。

 小学生の頃、近所のお店に買い物に行った時のことです。商品を袋に詰めながら、その店の女主人が一言。「〇〇君の家は、お父さんが帰って来ないんだって?」返答に困り、軽く頷いた私は、買い物袋を手にすると一目散にその店を出ました。

 当時、近所は私たち家族のことを面白おかしく噂していたようです。離婚した家庭が当時は、よほど珍しかったのでしょう。

 しかし、父親が帰らなくなり、寂しさと貧乏を抱えていた小学生だった私には、心ない大人の視線や一言は残酷なほど辛いものでした。

 小学生の私には、大人に立ち向かうだけの力も知識もないのです。

 令和の時代になっても、子どもに対する虐待は後を絶ちません。時に、目を覆いたくなるような悲しい報道を聞くにつけ、悲しさと怒りがこみ上げてきます。

 胸を私は、虐待を受けていた訳ではありませんが、興味本位から噂話に花を咲かせ、母や私たち兄弟のことを苦しめた近所の大人が大嫌いでした。

 そして、早く大人になって母を助け、大嫌いな大人たちを見返してやりたいといつも考えていました。

 子どもは、大人に対して無力なのです。

 そのことを大人はしっかりと認識した上で、接する責任があります。

 ですから、教師も無抵抗な子どもに対して、感情に任せて叱ったり、間違っても手を出したりしては、絶対にNGです。

 子どもたちの心に刺さった大人の言葉や態度は、そうそう簡単に癒せるものでありません。

 あの時から40数年以上経ってから、私が昔、住んでいた町を歩いてみました。

 町並みの様子は随分と変化していましたが、その町を歩いていると当時の大人たちの顔がありありと蘇ってきました。

 そして、例の店の前に行くと、あの時の女主人の一言が仕草や表情まで、頭の中で再生され、とても嫌な思いが胸いっぱいに広がりました。

 子どもが日頃から引け目を感じている心のマイナスに、私たち大人は、あたたかく包んであげる思いやりを持って接することが求められているのではないでしょうか。

 子どもは、大人が思っているよりも無力なのですから。

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