学校教育ー30 子どもたちの才能を伸ばす
◆子どもたちは、学校の授業で学んでいること以外に沢山の得意なことを持っています。
スポーツ、芸術、科学、歴史等々・・・ひとつのことを深く、自分の興味・関心から探求しようとして、素晴らしい才能を発揮している子どもは、数多くいます。
学校では、授業に関する分野だけで、子どもを評価します。評価といってもその子の、ある部分のことだけに絞って評価しているのであって、その子を丸ごと評価しているのではないのです。
しかし、学校の通知表の結果が、その子の全てを評価しているような錯覚に陥っている人が、まだまだ多いように感じています。
校長になり、全校の子どもたちに目を向けるようになってから子どもたちのいろいろなことに気付くようになりました。学級担任時代は、自分の学級の子どもたちのことはよく分かったつもりですが、学年、ましてや他の学年の子どもたちのことになるとなかなか見えなかったものです。
それが、管理職、特に校長になると、学年に関係なく、子どもたちのいろいろな姿、長所、才能に気付かされるようになるのです。
将棋と将棋盤を抱えて、校長室へ将棋を挑んでくる1年生の子どもがいました。その子の頭の中には、数多くの戦法が入っているようで、私が駒を動かす度に解説をしてくれます。感心しているうちに、私は小学校1年生にコロリと負けてしまいました。すると、その子は、何手か前に駒を戻しながら、丁寧に解説を始めてくれたのです。そして、もし、私がこのように打った場合には、こうなって、こうなるはずだと、その後の戦局まで教えてくれまました。過去に、このような1年生と出会ったことはありません。
将棋は、プログラミング教育に通じるところがあります。この子は、将棋を通して、プログラミング的思考を発達させているのです。
また、ルービックキューブをどのような崩し方をしても20秒程度で完成させてしまう6年生とも出会いました。私は、ルービックキューブやパズルは苦手なので、どうして魔法のように完成させることができるのか、不思議で仕方ありませんでした。
何か、その子にしか見えないものが見えているのかも知れないと、質問してみると「パターンを覚えるのです」という答えが返ってきました。
何百、何千というパターンを記憶しているというのです。その子は大会にも出場していますが、優勝する人は何万、何億ものパターンを記憶しているそうです。
以前、映画の主人公が、何百もある銀行口座の口座番号と名義を頭の中で記憶しているという場面を見たことがあります。「こんなことは、映画の世界だから」と思っていたのですが、ルービックキューブの天才と出会ってから、実現可能なのかも知れないと思うようになりました。
この2人の他にも、多様な才能に溢れた子どもたちがいます。
こうして考えると、子どもたちが学校の授業で見せている能力は、その子のほんの一部であることをしみじみと感じてしまいます。
ですから、通知表や受験の結果に一喜一憂するだけでなく、その子が持っている関心や能力を総合的に見ながらその子に合った教育を考えることが大切なのではないでしょうか。
教育の場は、学校だけではありません。もっと、広い世界で多様な場を視野に入れながら子どもたち一人ひとりが持っている可能性に目を向けていきたいと考えています。