コラムー12 話が上手な魅力的な方
聴いていてついつい惹きこまれてしまう、「もっと聴いていたいのに・・・」と憧れの念さえ湧いてくるほど、話は上手な方がいます。
同じテーマなのに全くこちらのレセプターが反応しない人もいれば、レセプター全開で吸収しようと思う方もいます。
これは、どの業界でも見られるのではないでしょうか。話し方によって、聴く側の意欲さえ、大きく左右してしまうのです。
そして、話し方が素敵な魅力的な方にお会いすると、心がウキウキしてきます。
元米国の大統領、オバマ氏もスピーチの達人でした。氏の話し方を分析してみると、笑顔で始まり、ユーモアを交え、個人的なエピソードも盛り込んで、聴く人を惹きつけていました。また、ジェスチャーや、伝えたい言葉を声のボリュームや調子を変えて繰り返します。
聴衆には、オバマ氏の笑顔、優しさ、親しみやすさ、そして、氏の伝えたかったことが、しっかりと印象付けられます。この手法は、オバマ氏の前にも、JFケネディー元大統領も使われています。
特にケネディー氏は、テレビを意識して、洋服の色や身だしなみにも細心の注意を払われたと言われています。
さて、こうして考えると聴く側にとっては、専門性の高い学会では無いので、話し手の容姿や言葉遣い、親近感を感じられるかどうかが、話の内容より重視されるようです。
どんなに正しく、ためになる話でも、下を向いて原稿を棒読みされては、辛抱の時間でしかありません。一流の話し手は、聴き手とのコミュニケーションを絶妙にとりながら、場の空気を盛り上げようとします。
よく学校で言われることですが、勉強は嫌いだけど、教えてくれる先生のことが好きになれば、嫌いな勉強にも一生懸命に取り組む、という子どもの心理に似ているのではないでしょうか。
そして、授業はチャイムが鳴ったら終わりです。教師の勝手で授業を延長して、子どもの休み時間を奪ってはいけません。話も同じです。定められた時間は、必ず守らなければなりません。時間は聴衆の持ち物なのですから。
聴衆が、聴きたがっているからついつい話を延長してしまった、というコメントを時々耳にしますが、それは単なる勘違いではないでしょうか?
話し手に気を遣っていることさえ分からなくなったら、おしまいです。
話は、言葉、音声、身振り、表情等、話し手の持つ様々な力を発揮させて、他人に内容を伝えていくものです。話し手の情熱や人柄、聴き手に対する配慮など、その根底にあるのは、人生観や仕事観などが総合的に集約されて、その人の話となるのです。
私が、お会いした話の上手な魅力的な方々は、皆、確固たる人生観や仕事観を持たれていて、心から尊敬できる方々でした。その方々を思い出そうとすると、皆笑顔で優しく話されている姿が脳裏に浮かび上がってきます。
◎ある名俳優が、「正しい演技は、正しい生活から」という教訓を遺されたそうです。演技にしても、どんな仕事にしても、そして、話(スピーチ)にしても、その根底には正しい生活を送るだけの正しい人生観や信念のようなものが必須なのかも知れません。