基礎基本の始まりは 「教育は愛」No.728

学校教育

学校教育ー147 基礎基本の始まりは

小学校教育に長く携わっていた私は、「学習の基礎基本は小学1年生から始まる」という思い込みをどこかで抱いていました。 しかし、幼稚園で園児たちと日々を過ごす今、その考えが大きな誤解だったことに気づかされています。

 基礎基本は、すでに入学前の生活の中に息づいているのです。

 その一例が「絵を描くこと」です。 年少クラスでは、クレヨンやサインペンで自由に線を描く「線あそび」から始まります。 年中、年長と進むにつれ、その線は少しずつ「ものの形」へと変わり、やがて意味を帯びた表現へと育っていきます。 年長になると、人の顔を描き、その横にひらがなを書き添える姿も見られます。

 わずか3年間ですが、年少さんと年長さんの作品には、驚くほど大きな成長の差が現れます。

 かつて小学校で、1年生の児童が電車を立体的に描いているのを見たことがあります。 遠近法を巧みに使い、今にも走り出しそうな電車。 その絵を見たとき、私は衝撃と感動を覚えました。

 今振り返れば、その子は幼稚園や保育園、あるいは家庭の中で、段階的に「描く楽しさ」を積み重ねてきたのでしょう。 入学前の数年間で自分なりの表現スキルを伸ばし、その到達点として遠近法にたどり着いていたのだと気づかされます。

 その子は小学3年生になると、透明な瓶を描いていました。 丸みを帯びたガラス越しに見える向こう側の景色まで、見事に表現していたのです。 その表現力は、周囲の固定的な枠にはまらず、のびやかに発達していました。 まさに「個別最適な学び」の姿そのものです。

 植物の育ち方に個体差があるように、子どもたちの成長スピードや関心の持ち方に差があるのは当然です。 そして、その成長の始まりは、決して小学校1年生からではありません。

 「もっと前から、すでに始まっている」

 この前提に立つだけで、小学校での指導方法や、目の前の子どもを見る視点は大きく変わるはずです。 子どもたちが入学前から丁寧に育んできた「基礎基本」を、私たちはもっと深く理解し、尊重すべきなのだと思います。 幼稚園に勤務するようになり、私はその事実の重みを改めて実感しています。

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