話を聞かせる工夫 「教育は愛」No.720

教師

教師ー108 話を聞かせる工夫

子どもたちに自分の話を聞いてもらうことは、簡単なようでいて、実はとても繊細な営みです。 心を開いてくれるまでには、時間も、信頼も、そして小さな成功体験の積み重ねも必要になります。

 かつて、ある教師が真剣な表情で 「子どもたちは、どうして私の話を聞いてくれないのでしょう」 と尋ねたとき、先輩教師は静かに、しかし迷いなくこう答えました。 「あなたの日頃の話が、子どもたちにとって魅力的ではないからですよ」 その言葉は厳しいようでいて、教育の本質を突いていました。

 子どもたちは、教師の話が“自分の世界を広げてくれるもの”だと感じたとき、自然と耳を傾けます。 その先に楽しい活動が待っていたり、心が温かくなる経験があったりすると、子どもたちは教師の声を合図のように受け取るようになります。

 しかし、もし日頃の話が説教や長い説明ばかりであれば、子どもたちは本能的に耳を閉ざしてしまいます。

 それでも教師はつい、「大切なことを話しているのに、どうして聞こうとしないのですか」と叱ってしまう。 その気持ちも分かりますが、子どもたちの心の扉は、叱責では開かれません。

 今、私が勤務している幼稚園では、先生方が子どもたちに話を聞かせるために、ピアノの音色にそっと言葉を乗せたり、紙芝居の世界へ誘ったりと、子どもたちが自然と耳を澄ませたくなる工夫をしています。

 そのため、先生が話し始めると、子どもたちは背筋を伸ばし、まるで物語の続きを待つように、静かに目を向けてくれます。

 「人の話を聞くと、自分の心が豊かになる」 そんな経験を、教師が意図的に積み重ねていくことが大切なのだと思います。

 そして何より、教師自身が、子どもたちの心に届く“語り手”であり続けること。 言葉に温度を宿し、表情に想いを込め、声にリズムを与えること。 その積み重ねが、子どもたちの耳と心をそっと開いていくのだと、私は信じています。

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