55のメッセージ-7 教え子への誠実なアドバイスとは
◆教師は、子どもたちが卒業した後も相談に乗り、人生の岐路に立つ教え子へアドバイスをすることがあります。先生を信頼して訪ねてきてくれた教え子に誠実に向き合うことは、教師なら誰しもが心がけることです。卒業した教え子が自分を頼って相談に来てくれる――教師として、これほど嬉しいことはありません。
その嬉しさゆえに、つい「聞き心地の良い言葉」で励まし、元気づけることを第一に考えてしまいがちではないでしょうか。しかし、私は大学4年生の時、まさにその「誠実なアドバイス」の意味を痛感する出来事を経験しました。
◆恩師の一刀両断が教えてくれたもの
中学校の理科教師になりたかった私は、小学校と特別支援学校の免許は取得できるものの、中学校理科の免許が取得できない状況にありました。 そこで、高校時代の尊敬する恩師にこう相談したのです。
「教員採用試験を受けずに一度卒業し、中学校理科の免許が取れる大学へ再入学したいと考えています。いかがでしょうか」
当時の私はすでに決意が固く、恩師から「頑張れ!」という背中を押す一言を期待していました。しかし、先生の答えは私の予想とはまったく違いました。
「千葉に今から理科の免許を別大学で取り直すのは不可能!まずは今年、小学校の教員採用試験を受けて教師になりなさい。それでも理科教師になりたければ、働きながら勉強すればよい」
恩師は理由を問いただすこともなく、私の甘い見通しを一刀両断してくださいました。その明確な言葉に、私は返す言葉を失いました。「不可能」に近い現実を突きつけられたことで、初めて自分の考えの甘さに気付かされたのです。
もし当時の私が逆の立場なら、 「そこまで考えているなら、やってみるといい。若いうちは夢に向かって挑戦することも大切だ」 と励ましの言葉をかけていたかもしれません。しかし、耳障りの良い言葉だけを与えるのは、見方を変えれば無責任なのかもしれません。
◆誠実なアドバイスとは、厳しい現実を伝える勇気である
教え子が人生の重大な岐路に立って相談に来たとき、 客観的な事実や厳しい現実をあえて伝えることこそが、本当の「誠実なアドバイス」 なのだと、この経験から学びました。
私は恩師の言葉に従い、教員採用試験に合格。特別支援学校に勤務しながら夜間大学へ通い、中学校・高等学校の教員免許を取得しました。結果として中学校で教壇に立つことはありませんでしたが、この免許は後に教育委員会で中学校を指導訪問する際、大きな力となりました。
今でも恩師への感謝の気持ちでいっぱいです。
◆教え子の未来に責任を持つということ
この原体験があるからこそ、私は教え子から相談を受けたとき、 単なる慰めではなく、その子の未来が本当に明るく開けるような 「誠実なアドバイス」をすることを心に決めています。
教え子たちの未来は、私たち教師にとってかけがえのない関心事であり、宝物です。そしてそれこそが、教師として生きていく上での何よりの糧となるのです。
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