55のメッセージー21 ロバ売りの親子にならないで!(職場編)
◆「ロバを売りに行く親子」の寓話は、学校の道徳の時間でもよく扱われます。 この話が伝える主な教訓は、次の2点に尽きます。
- 他人の意見に振り回されると、かえって悪い結果を招いてしまう。
- どんな選択をしても批判する人は必ずいる。だからこそ、自分で悔いのない判断をすることが大切である。
この寓話を初めて知ったのは少年時代でした。 「なんとも情けない父親だなぁ」と子ども心に思い、強烈な印象として残っています。
確かに、物事を進めようとするときに判断に迷うのは、人間の常です。 どうしたものかと色々な人に相談した結果、十人十色の意見に振り回され、収拾がつかなくなってしまった──そんな経験は、誰しも一度は味わったことがあるのではないでしょうか。
若い教師ほど“ロバ売りの親子”になりやすい現実
現在の学校現場では、キャリアの浅い先生が教科主任などを任されることも珍しくありません。 主任ともなれば、全校に向けた提案を行う必要があります。責任の重さゆえに判断は慎重になり、自然と多くの先輩方に相談することになります。
しかし、相談を受けた先生方は、それぞれの経験に基づいてアドバイスをくださいます。 当然ながら、その内容は千差万別です。
若い先生方はここで深く悩みます。
「A先生の意見を採用すれば、B先生の意見を無視したことになる。 かといってB先生の意見を通せば、今度はA先生の顔をつぶしてしまう……」
こうなると、相談した人数分だけ悩みが増え、引き算ではなく“加算”されていくのです。 そして最終的には、身動きが取れなくなってしまいます。
私が校長を務めていた頃、意欲に燃えた何人もの若い教師がこの状況に陥り、校長室へ相談にやってきました。 話を聞くと、彼らは相談した先生方「全員」のアドバイスを、なんとか企画に盛り込もうと必死に苦労していました。
まさに“ロバ売りの親子”そのものです。
私が若い教師に伝えてきた2つの助言
そんなとき、私はいつも次の2つを伝えてきました。
- 相談した先生方全員のアドバイスを、無理に盛り込もうとしないこと。
- 最終的には、主任である「あなた」が考えたことを企画すればよいこと。
そもそも教師という生き物は、人に教えることが大好きな人たちです(笑)。 一度相談されれば、頼まれていないことまで滔々(とうとう)とアドバイスしてくれます。 そこに悪意は一切ありません。ただ親切心から「教えたくて仕方がない」だけなのです。
迷ったときに相談することは、大いに結構です。 しかし、いただいたアドバイスはあくまで「素材」に過ぎません。 それらを基に自分の頭で考えを整理し、最後は自分で判断して、自分で企画すればよいのです。
どのような案を企画したとしても、賛成する人がいれば、必ず反対する人もいます。 最初から「全員に100%理解してもらおう」と考えてはいけません。
もし私が“ロバ売りの親子”の父親なら
もしも私が『ロバを売りに行く親子』の父親なら── 周囲からどんなアドバイスをされようとも、笑顔で「参考にします」と受け流し、当初の予定通りロバを引いて、息子と一緒に堂々と市場まで歩いて行ったことでしょう。
自分の判断に責任を持ち、自分の足で歩く。 それこそが、教師として、そして一人の人間としての誠実な生き方なのだと思うのです。
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